詩小説 「どこかのふたり」
珈琲を飲むあなたが格好良くて
隣にふさわしくいられるかなって考える
「自然体」って案外難しい
あなたの笑顔が正解だと思いたいけど
正解の『奥』をどうしても勘ぐってしまう
あなたの余裕は
わたしにはない余裕で
わたしの不安を
あなたは知らない
「一緒に食べたくて、買ってきた」
「楽しそうだね。後で行こっか」
「好きなの全部いいよ」
おおきな包容力にどっぷり
浸かってしまう
揺れが気持ちいいみたいに
難しいことを考えないあなたと
難しく考えすぎるわたし
顔をしかめたこともあったんじゃない?
消化しきれないことはなかった?
「自分が思ってるより相手は
気にしてないことがほとんどだよ」
「あなたはサブカレだよとか、
他の男とかは気になるよ!?」
気にし過ぎて思うこと言えないことも
心の距離につながるんだ
安心できるあなたのそばで
はにかむわたしはのびのびいよう
「格好つけて、無理してコーヒー飲んじゃった」
「ケーキ食べようよ」
どのケーキにしようか選ぶ顔が
男性から少年に変わる
「大人の男が台無し」
なおも笑顔のわたしに
「大人にも向き不向きがあんの」
お互い背伸びして
見合う自分をはかっていた
(好きでいてほしいもんね)
運ばれたケーキの先端を
わたしのお皿に乗せてくれる
その優しさにときめく
「おいしいよ?」
食べてみてよ、と目がうながす
おいしいの顔に満面の笑み
あなたがくれた
穏やかな昼下がり
(おわり)