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高等学校|「卒業前のキモチ」句会
nhkk事務局スタッフ:
実践報告レポートでは、nhkkにお寄せいただいたものに加えて、副会長のブログ『夏井いつきの「いつき組日誌」』へ届いた特派員報告の中で、ぜひnhkkで皆様と共有していきたいと考えた実践報告も随時掲載しております。
今回は、以前「機械科男たちの文化祭俳句」でご紹介しました「山口県のみのる先生」の、普通科での実践報告をご紹介します。
みのる先生:
1月の特派員レポートと言えば、恒例の「卒業前のキモチ」句会です。今回は機械科ではなく、普通科でのレポートです。日頃は授業に行くクラスではないのですが、年末、このクラスの担任と飲みに行く機会がありまして……、そこで「うちのクラスで俳句の授業やってくださいよ~」と依頼され、今回の運びとなりました。
授業は2時間で行いました。まず1時間でこのワークシートを使って、俳句の作り方のレクチャーをしました。
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初めてのクラスで、果たしていい句が出てくるのかどうか……、担任の先生も参観しながらそのことを心配していましたが、その担任の先生にも無茶振りで作ってもらって、11句の優秀句を選びました。
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これを使って句会です。ここからは組長の「句会ライブ」を参考に、11句の中からそれぞれ好きな句を挙げてもらって、どういうところが良かったかを発表してもらいました。一体作者は誰だろう? ……という中でのそれぞれの選句理由は本当に面白いものです。
このクラスは30人のクラスなんですが、時間内に全員に発言してもらうことができました。それぞれの3年間に自分の思いを重ねて発表する子もいれば、「1番俳句っぽい」や「季語のイメージからこんな気持ちのような気がする」という理由で発表してくれる子もいました。句会の間はとにかく爆笑、爆笑でやっているこちらも楽しかったです。
句会の結果……
第1席 散る桜二年半もの片想い
第2席 にぎやかなクラスで過ごす春隣
第3席 面接で飛んだスリッパ秋の雲
という結果になりました。「これ、誰の句?」で恥ずかしそうに挙手する生徒……。そして、それを見て「えーーーー!!」の絶叫。この瞬間がとても面白いです。二年半も片想いしたことも、部活動を2ヶ月間サボり続けていたことも、面接試験の時にスリッパを飛ばしてしまったこともトイレに籠もって担任の愚痴を言いまくったことも……。そういう経験があるからこそ、こんな素敵な俳句になるんだろうなぁということも実感するし、こういう経験を堂々と俳句にしてくれた生徒たちの気持ちをとても愛おしいと思いました。卒業前の今となれば、全てが笑い話です。
ちなみに
⑪「ありがとう」言わねばならぬ春隣
はこのクラスの担任の先生の1句です。この子たちに3年間の感謝の思いを込めて是非「ありがとう」と言いたいという思い、でも、それを言う日がなるべく来なければいいのに……という思いが伝
わったのか、生徒たちもすごく嬉しそうでした。
こうやって飛び込みで授業をさせてもらいましたが、突然初めての生徒たちの前に立ったとしても「俳句」がその壁を取っ払ってくれていると感じます。指折り数えて、真正面から「言葉」と向き合って、自分の思いを俳句に詠み込もうとする姿はとても尊いものだと思います。この子たちがこれから俳句に触れることがあるかどうかは分かりませんが、プレバトの俳句コーナーを見た時に、「あー、自分も高校時代、飛び込み授業で俳句の授業やったなぁ」と思い出してくれると嬉しいです。
これからも学校現場でできる俳句の種蒔き活動を頑張っていきたいと思います。いつもありがとうございます。
以上、山口県のみのるでした。
nhkk事務局スタッフ:
みのる先生、前回に引き続き素晴らしいレポートをありがとうございました。
飛び込みの授業ということでしたが、出来上がった俳句がリアリティにあふれるもので素晴らしく、さぞや盛り上がったことと。教室の笑い声が聞こえてきました! 卒業を控えた3年生にとって、心に残る思い出の授業となったに違いありません。
さて、次はどの科のどんなご実践となるのか……、次回のレポートも、楽しみにしております。
■日本俳句教育研究会(nhkk)
「俳句」を教材とした様々な教育の可能性を研究する日本俳句教育研究会は、「俳句」を教材に教育活動を展開しようとする教師や俳句愛好家の情報交換の場になりたいと活動する任意団体です。
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