ドナルド・キーン『正岡子規』
9月19日の子規忌ももうすぐです。
数多く出版されている正岡子規の評伝の中から、今年亡くなられたドナルド・キーンさんの『正岡子規』を手に取りました。日本と日本文学をこよなく愛し、2011年3月の東日本大震災の後、日本に帰化されたことでも知られるキーンさんですが、彼が捉える子規像がどんなものなのか、興味深く読み進めました。
子規や子規作品への深い造詣から書かれている本作は、幼少期から最晩年までを追っていく中で、子規を理解するのに外せないオールスターが登場します。また、引用される文献はすべて口語訳付きで載せられていて、明治の文体になれていない読者にとっても読みやすく、子規の生涯を詳しく知ることができます。
また、キーンさんならではの解説に意外なものが多くて面白く、
などの指摘などは、ハッと驚かされました。
子規への称賛だけでなく、批判の声なども冷静に分析しながら、日本の伝統文化が危機的状況にあった時代において、「写生」という新しい手法で、俳句や短歌を国民的文芸にまで高めた革命児子規が淡々と描かれた評伝でした。