漱石・太宰 関連本
2018年より、nhkkのブログにも備忘録的本の感想を投稿することにしました。
これまで私個人のSNSで投稿していた流れのもので、かなり個人的な感想になっていますのでご了承ください。(nhkkの活動には関係のない内容ですが…。お時間の許す方はお付き合いください。)
夏目漱石『道草』
自伝的小説。養父母と義父からのお金の無心問題に、「がたぴしする」夫婦仲がリアルに描かれます。お金の問題以上に、どうしようもない夫と妻のズレが淡々と…。それにしても埋めようのない夫婦の距離…。男と女の考え方の違いが良く描かれ、永遠に交わることはないようで…、恐ろしいほど。
夏目鏡子『漱石の思い出』
文豪漱石でなく、夫人述の生の人間漱石が語られ、漱石の神経衰弱のことなどよく分かる一冊。漱石の狂気を病気のせいと開き直って夫につくす鏡子さんに驚く…。「道草」で漱石が夫婦仲を好きなように書けたのも、結局は夫人に甘えていたのかもしれない…という気がしてきます。
猪瀬直樹『ピカレスク 太宰治評伝』
裏表紙には「井伏鱒二と太宰治の、人間としての素顔を赤裸々に描く傑作評伝ミステリー」と。読み進めながら、猪瀬直樹さんは、あまり太宰治と特に井伏鱒二がお好きではないのではないかと…。太宰の死の真相に思い至って書かれた本という印象で、こんなにも作家に対して挑戦的に書かれた評伝を始めて読みました。もちろん、謎解きの部分に、新発見や納得させられる部分はあったのですが、太宰ファンの私としては、やや悪意さえみえるくらいに感じてしまい…、そこがしんどかった…。
津島美知子『回想の太宰治』
『ピカレスク』読了後の気分を切り替えたくて、再読、救われました。同じ出来事が描かれても、こちらは太宰への愛情から書かれた印象。生身の太宰を知っている、妻だからこそ書ける一冊で、本当に賢明な女性だったのだろうなとつくづく…。実際には妻としての悩みも多かったのでしょうが、その辺りには触れずに、夫である作家を淡々と描きつくし、作家太宰に惚れていた美知子さんが伝わる一冊。