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加藤千恵『ハッピー☆アイスクリーム』

この記事は、日本俳句教育研究会のJUGEMブログ(2018.10.20 Saturday)に掲載された内容を転載しています。by 事務局長・八塚秀美
参照元:http://info.e-nhkk.net/

加藤千恵さんの17歳の時のデビュー歌集『ハッピーアイスクリーム』のリミックス版とも言える一冊。オリジナルの短歌全てに加えて、自らの高校生の時の短歌を元にした高校生を主人公とした切ない青春小説5編を収録。

高校生の短歌……というと、いかにもありがちな恋の歌を想像するかもしれませんが、いえいえ、甘っちょろいとこで終わらないリアルなナマの女子高生がそこにあります。また、これを元にした短編も、これまた少しずつヒネりがきいていて、願い通りには進んで行かない現実を受け止めようとする等身大の高校生が浮かび上がってきます。もちろん、授業で担当している高校生たちに紹介しました。

「ハッピーアイスクリーム」とは、「会話中、偶然同時に同じ言葉を言ってしまった時に言い合う言葉」で、早く言えたほうが勝ちとか、アイスをおごってもらえるとかというものです。まさに、短歌も小説も、どれも高校生が「ハッピーアイスクリーム」と思わず口ずさんでしまうような高校生「アルアル」感でしめられた一冊でした。

重要と書かれた文字を写していく なぜ重要かわからないまま
傷ついたほうが偉いと思ってる人はあっちへ行って下さい
泣きそうになるのは誰のせいでもなく時おり強い風が吹くから
カラオケに行ったしコーラも飲んだけどやっぱりさみしいもんはさみしい
「燃やすとき公害になる」補聴器の電池を抜いた入棺のとき
走ってるつもりだったけどもしかしたら走らされてるのかもしれない
いつどこで誰といたってあたしだけ2センチくらい浮いてる気がする
夕立が街ごと洗い流すのをどこかで待っていたのだと思う
永遠に醒めない夢はそれはもう夢ではなくてべつの何かだ
いつだって見えないものに覆われて知らないものに守られている