化ける
写真は浮世絵師 葛飾北斎の
「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」
富士山と荒れ狂う波。
為すすべのない小船と船頭。
言わずと知れた名画である。
この絵をはじめて見たとき
その圧倒的な迫力に魅せられた。
その場を離れることができなかった。
(その場というのが、トイレだったということ。そして目が釘付けになったのがカレンダーに印刷されていた本作だということ。そしてなにより、小さい頃のぼくは、まだ用を足している最中だったということ。こんなこと、恥ずかしくて言えないよーーー。だから、かっこつけさせてね。)
自分自身との対話がはじまる。
「化ける...」
次第に絵の仕組みに気がついた。
山を見ていると波が山に見え、
波を見ていると山が波に見えてくる。
山と波の色と形がよく似ているのだ。
そしてお互いを一緒には
把握できない構図になっていた。
そのため
異なるものどうしが
互いの姿に「化ける」ことに成功し
それぞれの存在を強調するように
働いているのである。
ここで、音楽へ話を展開したい。
2020年にリリースされた
サンボマスターの「花束」
という歌がある。
この歌で伝えたいことは
あなた=花束
であるということ。
歌の中に
「花束」と「あなたは」
というフレーズがたくさん登場する。
韻を踏んでいるのである。
(「花束」も「あなたは」も、母音が全て「あ」ですよね。だからこの2つの言葉の音がとても似るんです。つまり「化ける」んです。)
そのため
「花束」と聞くと「あなた(は)」
をイメージするし
「あなたは」と聞くと「花束」
をイメージする。
ここでもまた
異なるものどうしが
互いの姿に「化ける」ことに成功し
それぞれの存在を強調するように
働いていたのだ。
これはまさに
「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」
の山と波の関係そのものである。
浮世絵 と 音楽
分野は異なるが同様の仕組みが
用いられていたのである。
ぼくはこの仕組みに2度も魅せられた。
仕組みの正体は「化ける」
分野が違えば
手法の真似はできない。
しかし、仕組みの応用は可能なのである。
[手法]
→絵:色/形/構図
→歌:韻
[仕組み]
→絵:化ける
→歌:化ける
この仕組みの抽出、応用を
呼吸のごとく行なっているのが
トップクリエイターである。
(くれぐれもサンボマスターは葛飾北斎を参考にしたんだろう。なんてことを言っているわけではありません。ただ、仕組みが似ているなぁ、サンボマスターすごすぎるなー、とぼくなりの気づきをまとめさせていただきました。)
それでは「化ける」
実際にご体感ください。
サンボマスターで「花束」
https://sp.uta-net.com/movie/282771/
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