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オンライン診療の導入で介護現場の負担減

 SOMPOホールディングス株式会社のデジタル事業子会社、SOMPO Light Vortex(以下、ライトボルテックス)は、人手不足の介護現場でオンライン診療キット「タイトケア」の提供を拡大します。
 タイトケアは小型機器で、手のひらサイズ本体には画面やカメラがあります。ビデオ通話はもちろん、体温のほか、肺や心臓の聴診音、咽頭や鼓膜、皮膚の画像を医師と共有できることが特長です。遠方にいても多くの診断材料を集められるため、対面の診療が必要でなければオンラインで診療し、薬を処方できます。
 
 医療法人松沢会希望館病院(群馬県高崎市)が「タイトケア」を導入し、2024年1月から関連施設の特別養護老人ホーム希望館と連携体制を取っています。毎朝、施設の看護師がタイトケアを利用し、入居者の健康データを10分ほどで取得しています。
 入居者がけいれんを起こした際、介護現場から医師に口頭や文章で伝えても正確な判断は難しいですが、タイトケアは動画を送信できます。また、動画や患部画像を共有し、健康データを遡ることで診療の質を高めることができます。
 
 希望館には看取り期の入居者が多く、呼吸などに変化があると看護師や介護士、送迎担当者が病院に付き添います。1回の受診に平均70分ほどかかり、混雑時は2~4時間の場合もあるため、入居者とスタッフ両方に大きかったのですが、タイトケア導入で「念のための外来診療」が減り、業務改善に繋がりました。
 実証結果の試算によると、看護師の外出業務は年間970時間でしたが、導入後は3割(290時間)減る見通しで、介護士も同様の時間が3割少なくなるそうです。多くの仕事を担う介護現場で通院以外のサービスに時間を割きやすくなりました。
 
 ライトボルテックスは今年、医師や看護師、介護士などの情報共有システム「バイタルリンク」を全国3万施設に導入している帝人ファーマと提携しました。販売網を活かして、タイトケアの提供を広げていくそうです。
 
 高齢化率は年々上昇しています。医療従事者数の地域格差、慢性的な人手不足など、介護現場の負担が増すことが懸念されています。
 オンライン診療の投資を回収する仕組みがない、職員のデジタルスキル研修、医師側のオペレーションの煩雑さなどの普及への課題により、日本のオンライン診療の利用率はまだまだ低いですが、この事例がその突破口になることを願います。(H. S)
 
参照:日本経済新聞(2024年9月5日付)
日経電子版(2024年9月6日付)https://www.nikkei.com/article/DGKKZO83272940V00C24A9TB2000/
TytoCare
https://tytocare.lightvortex.com/top

出典:日経電子版(2024年9月6日付)