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東川篤哉『密室に向かって撃て!』にガチで挑んだ読者の記録

タイトルの通り、本格ミステリにガチで挑んだ顛末をここに記す。ミステリ本を読むときに登場人物を忘れないようにメモるくらいのことは何回かしていたけれど、発言や描写、事件の状況や時系列などを細かくメモしながら読み、「絶対解き明かしてやる!」と意気込んだのは初めてである。

あと、この記事には一応犯人だとか、ネタバレとかは書かないのでご安心して読んでください。書くとしたら「解決編は〇〇章」ぐらいの要素なので、それすら知りたくない! という人はブラウザバックでお願いします。

東川篤哉『密室に向かって撃て!』とは

烏賊川市警の失態で持ち逃げされた拳銃が、次々と事件を引き起こす。ホームレス射殺事件、そして名門・十乗寺家の屋敷では、娘・さくらの花婿候補の一人が銃弾に倒れたのだ。花婿候補三人の調査を行っていた《名探偵》鵜飼は、弟子の流平とともに、密室殺人の謎に挑む。
ふんだんのギャグに織り込まれた周到な伏線。「お笑い本格ミステリー」の最高峰!

東川さんの『烏賊川市シリーズ』2作目に当たる作品になる。1作目『密室の鍵貸します』も楽しんで読んだのでこの作品を選んだ。前作は特にメモとかもせず流れるように読み、解決編で「ほへぇ~」なんて感嘆の声を上げたような気がする。

前作を読んだ感想がほぼこの作品にも当てはまる。端的に言うと「とてもシンプルかつライト、そして高純度の本格ミステリ」であるということだ。

社会の闇だとか屈折した人間関係だとかは出ないので、純粋に謎解きに集中できる。そしてクスっとくるような描写が、クスっとくる文体で書かれているので、緊迫した状況でも思わず笑ってしまうのである。

高純度の本格ミステリ

ライトとはいっても、キャラがチャラチャラしているとかそういうわけではなく、全体的にコメディタッチで描かれる。序盤では、警察の失態で拳銃が何者かに持ち去られてしまうというとんでもない自体を引き起こしてしまう。多分、社会派ミステリだったら、後々世の中を震撼させるような出来事が起こってしまうだろう。

しかし、この作品ではメタの本文から「この後の事件で使いますよ~。一般人が銃を使う事件なんて普通起こせないので、そのための設定ですよ~。」と説明される。本格ミステリとして高純度というのはこういうことだ。つまり、謎解きに必要な部分以外の描写は、可能な限り削ぎ落とされているのである。

全体を通してコメディ調に書かれているので、その雰囲気だけでも面白い。途中、探偵に危機が迫るようなことがあるのだが(そうでもないか?)、思わず笑ってしまった。ああいうシンプルなボケを、緊迫した状況でやるってのがいい!

筆者の調査報告

では私の戦績をここに記述しよう。

ざっくりと言ってしまえば、「犯人は正解。トリックは正解。ただ、事件の手順がボロボロの推理であり、この推理どおりに犯行を行ったら幸運に頼った綱渡りになってしまうだろう」ってな感じである。

この本の解決編は3章に分割されている。最初に「誰が犯人なのか」、真ん中に「どうやったのか」、最後で「残った細部埋め」という構成になっている。この内の最初と最後はほぼ正解までたどり着けたのだが、肝心要の真ん中がボロボロだったというわけである。

完走した感想

めっちゃ面白いやん!!!

これに尽きます。やっぱり自分であーでもないこーでもないと足りない頭を動かして考えたうえでの解決編は「なるほどなあ~」という納得感があります。それを知った後だと、あの描写はこういうわけだったのか! と気づくことにもなります。すごく本を好きになれます。

ミステリではコナンの小五郎のようなキャラがとちゅうにへっぽこ推理を披露して~、のような展開がお約束ですが、今回私の第一候補推理がまんまとそれで否定されてショックを受けました……。東川さんやっぱり凄いというか、普通の人が10分考えたくらいで思いつけるものは、しっかりと考えて潰してくれるのが今回は親切だなあと感じました。

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↑こんな感じ。登場人物、時系列や事件の手がかりなんかはiCloudのメモ。解決編前の推理組み立ては紙でやりました(字汚すぎるだろ…)。

過去に読んで記憶からもう抜け落ちている本格を引っ張り出してやってみようかなとも思いました。今後、本格ミステリがより楽しめそうです。

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