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#不思議系小説 ニューシネマ・パラダイスシティ

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幻想と日常、後悔や嫉妬、死 色んな不思議を文章にしてまとめました 長いのから短いのまで、超現実的非日常体験をどうぞ ヘッダー画像は時々変わります
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#週刊少年マガジン原作大賞

パーソナルセンター

 21xx年、地球は巨大国家が海を挟んで睨み合い、資源や領域を巡って覇権を争っていた。

 いっぽう度重なる経済的内戦によって国土の荒廃した日本では、派遣会社が全てを牛耳っていた。いつの間にやら可決されていたらしい法令により、国民は所轄の自治体窓口に出生届を提出した瞬間から国家勤労者総動員法(国労則)に則って国家勤労者派遣局、通称パーソナルセンターに登録される。
 そして義務教育を受けた時点から、

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暗黒大陸メキシコ

暗黒大陸メキシコ

 朱塗りの手すりに囲まれた舞台の上で、4人の女が踊っている。4人ともお揃いの赤い着物に黒いおかっぱ頭。前髪をパツンと揃えた髪型をしていて、それが右に左に首を振り身体を揺らすのに合わせて、ふりふりと膨らんでは靡いている。着物の裾から覗く白い素肌が鬱蒼とした鎮守の杜に差す木漏れ日を浴びてまぶしく光る。四隅のかがり火に照らされて、時折火照った頬を伝う汗が光る。音も歌もなく、踊り続ける4人の女。
 太い眉

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#不思議系小説 タリスマン

 青く、どこまでも晴れた遠くの空の下でもうもうと立ち上る黒煙を見ていた。車も人も通らない田舎道。のどかな陽射しとぼんやり浮かぶ真昼の月。それとは対照的に、どこかで誰かの財産が、命が燃えている。
 ぼがん
 と低い音が響いて、ひと際大きな黒煙の塊が上っていった。青空のバケツに墨汁を流し込んだように、黒煙は高く高く上っていって、やがて薄く散っていった。

 ちりん。
 谷町九丁目の交差点。千日前通は深

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