物語コーポレーション(3097)の業績レビュー、成長の源泉は?
こんにちは。
本日は個別の企業に関する話題です。
私は株式投資の一環としてレストランチェーンの月次業績をフォローしています。
焼肉きんぐを主力とする物語コーポレーションもフォロー対象です。
まず、以下の図をご覧ください。
サイゼリア、すかいらーく、物語コーポレーションを比較した月次売上高の前期比(%)の推移です。
主力業態・既存店の売上高の比較です。
一番下の折れ線が物語コーポレーションですが、どうみても右肩下がりですよね?
今年の4月~5月はとくに100%を割っており、それ以降も100%前後を低空飛行しています。
物語コーポレーションといえば、焼肉きんぐだけでなく、丸源ラーメンなどいつも混んでいるレストランを展開しており勢いがある会社だというニュースなどをよく聞きます。
しかし、フォローしている月次データはその印象とは真逆の状態でその理由を探るべく調査し、私なりに理解した内容を共有したいと思います。
月次既存店売上高データをフォローする理由
月次データをフォローする理由ですが、飲食業のような業態は日々の売上がそのまま業績に直結します。
日次の売上が月次として蓄積、月次が四半期、年度の決算に反映されます。
そのため、より早く出る実績データをフォローすることにより、四半期および年度決算の着地点がより早く見通せるようになります。
そもそも企業自身も同様に日次、月次データをフォローして、企業の経営に活かしていると思いますが、その目線に立つイメージですね。
その上で、例えば決算で発表する企業の計画に対し、月次ベースでの実績と大きく差異があるケースなどを早めに検知して、株式投資に活かせる場合があります。
次に、なぜ既存店売上高なのかについて、まず売上は既存店と新規店に分かれますが、新規に店を出した場合は当然売上は上がります。
ただし、新規出店に伴う売り上げ増というのは純粋な企業努力による業績向上ではありません。
新規店も一年後には既存店になり、既存店の売上げを向上しないがぎり企業はいずれ行き詰ってしまいます。
その典型的な例が、「いきなりステーキ」で新規出店率が25%、売上増は6%程度という記事を読んだ記憶があります。
その後どうなったかはみんさんもご存じだと思います。
ということで、私は既存店の売上高の前期比に着目して月次データをフォローしています。
さらに、主力のブランドのみの売上をフォローするようにしています。
つまり大黒柱・稼ぎ頭となる事業は順調なのかを確認しているわけです。
物語コーポレーションの計画・実績の推移
株式投資という観点から考えると企業の計画に対して実績を比較する必要があります。
会社発表の決算報告資料が企業IRページで参照できます。
過去5年程度の決算資料から数値を抜き出してまとめたものが以下の表です。
この表、数値から私は以下のように解釈、理解しました。
通期の売上計画は10%台。コロナ禍の2021~2022年は20%前後と強気の経営を進めた。
その結果計画には届かなかったが、結果として10%台で推移し、他社比較でいい業績結果となった。
焼肉部門は全体の半分以上の売上を占める主力の業態であるが、会社が売上増として注力する業態では必ずしもない。
全体的に主力のはずの焼肉部門の会社計画は控え目であり、かつ、実績も他の業態より伸び率が低い。
さらに焼肉部門の既存店に至っては売上の伸びは非常に低く、2019年、2024年ともに 1%台であり、計画からも会社として既存店の売上増は期待していない。
最後の焼肉部門の既存店の伸びについては、上記の表のほかさらに3年程度分の決算資料を確認しましたが、ここで挙げた数字と同程度で計画・実績ともに低空飛行となっている。
サイゼリアが既存店の売上の伸びが20%近くあることを考えると低すぎるというのが正直な印象でした。
物語コーポレーションを牽引するものは何か?
既存のビジネスの伸びが大きくないのであれば、どこが伸びるのか、伸ばそうとしているのか疑問になります。
2024年6月期の決算資料を読み返してみると以下の2つではないかと考えます。
① 新規出店の強化・継続
2024年6月期の実績は74店舗、11.5%増。2025年6月期は93店舗、12.9%増の計画。
過去10年以上、年間10%前後の店舗増を計画・実施しており、今後も店舗を増やすことによる売上を伸ばすことが最大の戦略のようです。
なお、この新規出店には、海外のへの積極展開も含まれます。
事実、今期の決算資料でも業績要因として最大のものに挙げています。
② 新業態の開発・展開
新規出店以外の成長エンジンとして、新規業態を積極的に展開しています。
特に「ゆず庵」については既存店売上計画も他の業態より頭一つ抜けた計画、および、実績となっています。
このように主力の焼肉きんぐ以外の柱となるビジネスを育てようとしようとしています。
今後の進展に注視
以上のとおり、物語コーポレーションの成長戦略は、新規出店および新業態の展開を二つの大きな柱としているようです。
新業態に関しては業績に大きく貢献するのは時間がかかります。
したがって当面は新規出店を継続・強化することが、売上増を図るための最も注力すべき戦略であると理解します。
より分かりやすく言うと、店舗ごとの売上・収益力の向上よりも店舗を増やして売上げを増やすことに力を入れているということです。
当然、会社としては既存業態の強化も取り組んでいくと思いますが、新規出店を除き売上を上げるという観点では貢献度は低いと会社側も考えており、また実績としてもそうなっています。
逆に言うと、新規出店戦略になんらかの躓きがあると成長への障害となる可能性が高いと考えます。
最後に
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