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物江潤著『「それってあなたの感想ですよね」論破の功罪』をよんで
私は胸を張って「感想」をいいます。この本、読んでよかったです。物江さんは福島市で塾を経営されているとのことですが、私もこの塾に通いたいって思った。今日の読書感想文は物江潤さんの本です。
タイトルからも分かるように「ひろゆき氏的思考」の紹介からこの本は始まり、題名はポップですが、その先の内容は著者の苦悩・現代人の末人問題へと続きます。
三島由紀夫や赤塚不二夫について、最近は分かりやすい論考も多く、身近に感じられる機会が増えてきましたが、ニーチェについては、私は何度挑戦しても捉えがたく、様々な解説書を読んでは理解できず、挫折するというのを繰り返してきました。簡単なニーチェ解説本でこんな感じかと表層の感想は抱くものの、真のニーチェに近づこうとすると弾き返されるようなもんです。
この本は、現代においてニーチェをどうとらえるかという意味においても読んでいて面白かったです。人生に思い悩む私に勇気をくれました。
感想を排除し、ありもしない普遍性を追い求めるために徹底的に論理的であろうとすれば、そのうち何も論が紡げなくなり、晩年のニーチェのような沈黙か発狂が待ち構えています。
所属組織での私は発狂寸前の「沈黙」状態だった。医学において普遍性なんてどこにもないのに、論理的でなければならないという状況が苦しかった。エビデンスに従い、論理的であろうとすればするほど、黙るしか私には術がなく愚かだった。また、著者が記すように論理って、❝「論理的な正しさ」とは、非論理的なルールによって姿を変えてしまうという、身も蓋もないような❞ (p136)ものですよね。恐ろしい呪縛です。
著者は「感想」の価値を本書を通して訴え、論理やエビデンスやコスパ・タイパを否定するようなこともない。キーワードは「規範」である。
論理的・合理的でありたいという心象風景が最後の武器である。そして論理的でありたいならば規範が必要だ。だから健全な共同体・界隈に所属すべし。磨かれた感受性により規範をストックせよ。
この本を読みながら、『海と毒薬』を読み返したいなと思った。
この本の中で紹介されていたものを備忘録として記します。時間を見つけて読みたい。
ミラン・クンデラ著『存在の耐えられない軽さ』
山本七平著『「空気」の研究』
横川良明著『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』
福本伸行著『最強伝説 黒沢』