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DX人材を定義するデジタルスキル標準

こんにちは。
税理士法人上坂会計 DXメンターチームの笹岡です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していくためには、社内にDX人材を育成することが必要です。
では、DX人材とはどのような人材なのか、皆さんはどのように考えていらっしゃいますか?

DX人材とは何か、その参考として、今回は経済産業省が出している定義をご紹介させていただきます。

経済産業省は、2022年に「デジタルスキル標準」というものを策定しました。これは、企業がDXを推進するにあたり、その担い手である社員が備えるべきスキルをまとめたものです。

デジタルスキル標準」は、大きく2つに分かれます。
一つが、全社員が備えるべき「DXリテラシー標準」、
もう一つが、中心となってDXを推進する人材が備えるべき「DX推進スキル標準

以上のように、経済産業省が考えるDX人材には、「全社員が目指すべきDX人材像」と、「その中でも特に中心的な人物がなるべきDX人物像」の2種類があるのです。

それぞれ、もう少し細かく見ていきます。



DXリテラシー標準

これは上述の通り、業種を問わず、全ての会社の全ての社員が備えるべきマインドやスキルを整理してまとめたものです。ここでいう全社員というのは、役員も、中間管理職も、一般社員も、パート・アルバイトも、営業部も製造部も総務部も、会社の中で働いている人は例外なく全てです。

まず押さえていただきたいのは、DXを推進していく上で、DXに関係ない社員は1人もいません。立場や部署を問わず、全員がDXの当事者なのです。

なぜなら、DXとは、デジタルを使って、会社そのものを変える取り組みだからです。この辺のことは、以前書いた記事にて詳しく説明させていただいておりますので、そちらをご覧ください。
「DXなんて全然知らない!」という人に向けたDX概要

会社そのものが変わるのに、社員が変わらないというのも、おかしい話ですよね?

役員を含む全社員は、会社が変わっていくこと、変わっていかなければならないことを理解し、そのために自分自身も変わっていかなければならないことを知る必要があります。
経済産業省の言葉を借りるなら、「変革への受容性」を高める必要があります。

全社員に変革への受容性が無ければ、仮に一部の人間がDXを強力に推し進めようとしても、一部の社員の反対に遭って、その変革は頓挫してしまうでしょう。
なので、DXを実現するためには、全社員が変革の受容性を持つために必要な教養であるDXリテラシーを身に付けなければなりません。

DXリテラシー標準は、そのための標準的なスキルやマインドをまとめたものです。DXリテラシー標準は、「マインド・スタンス」「Why」「What」「How」の4つに分かれます。

「マインド・スタンス」は一番ベースとなるもので、DXを受け入れるための前提となる、必要な考え方や関わる姿勢をまとめたものです。
この「マインド・スタンス」を理解した上で、なぜDXが必要なのかを理解するための「Why」、具体的なデジタル技術としてどのようなものがあるかを知るための「What」、それらデジタル技術をどのように活用するかを知る「How」を学ぶべき、ということがDXリテラシー標準の全体像となります。

それぞれの詳細な内容は、解説し出すとかなり長文となってしまいますので、本記事では割愛させていただきます。
いずれは紹介させていただこうと思っていますが、もしご興味があれば経済産業省から出ている資料をご覧になってみてください。
DXリテラシー標準概要


DX推進スキル標準

DX推進スキル標準は、会社の中で中心となってDX実現に向けて引っ張っていってくれるような人材(DX推進人材)が身に付けるべき標準的なスキルをまとめたものです。
DX推進スキル標準

DX推進スキル標準においては、まずDX推進人材を5つの人材類型に分けています。

  • ビジネスアーキテクト

  • デザイナー

  • データサイエンティスト

  • ソフトウェアエンジニア

  • サイバーセキュリティ

ビジネスアーキテクトは、DXで実現したいこと、例えば新規事業の創出、既存事業のデジタルによる効率化などの目標を達成するために、誰の協力が必要なのか、どんなシステムやツールが必要なのか、どんな順番で進めていくのか、といった計画を立てて実行していける人材のことです。
ビジネスアーキテクトは、いわばDXの企画を立てる人材ですので、業務に関する知識とIT知識の双方を十分に理解している必要があります。

デザイナーは、実現しようとしているDXが、主に顧客やユーザーの視点で考えたときに適切なものであるかどうかを考えることができる人材のことです。顧客が感じる価値(社内の業務変革が目的のDXなら、社内ユーザーが感じる価値)を最大化することを目的に、あるべきDXをデザインするような人材が、ここでいうデザイナーとなります。

データサイエンティストは、業務の中で収集、生成したデータを加工したり分析したり解釈したりして、事業に役立つ知見を得て現場に役立てるといった取り組みを行う人材のことです。統計学や分析ソフトなどのデータ分析に必要な知識が求められますが、ただの数字遊びに終わらないためには、業務に関する知識も必要だとされています。数字で分かること、現場で分かること、両方を知っているからこそ、事業に役立つ気付きが得られるのです。

ソフトウェアエンジニアは、名前から連想される通り、DXに必要なシステムを開発したり、導入・構築したりするようなエンジニア人材のことです。ビジネスアーキテクトやデザイナーが企画・考案したDXの構想を実際に実現して、形にしてくれる存在です。様々なIT製品に関する知識や、システムの開発手法についての理解も求められます。

サイバーセキュリティは、様々なセキュリティリスクを想定し、リスクへの対策を実施する人材のことです。年々、セキュリティ事故の数は増加しており、リスクが高まっているため、どのようなリスクがあるのかを十分に理解し、セキュリティ対策を打つことができる人材の重要性も大きくなっています。

以上がDX推進スキル標準の5つの人材類型なのですが、皆さんこう思いませんでしたか?
「そんな人材、社内にいないわ!」

はい、普通いません。
特に中小企業にとっては、上で書いたようなDX推進人材を社内に育成したり、外部から雇用することは、非常に難しいと言わざるを得ません。

では、そのような企業はDX推進を諦めなければならないかといったら、そうではありません。

上で書いたのは、あくまで経済産業省が取りまとめた人材類型であって、この5類型の人材を全て社内に備えなければいけない訳ではありません。御社のDXにとって必要な人材がいれば、それで十分なのです。

DXを企画するビジネスアーキテクトやデザイナーのような人材は必要であっても、例えば、データ活用するところまでにはまだ至らないと考えているなら、データサイエンティストは必要ありません。外部に頼れるシステム会社のパートナーがいるのであれば、社内にソフトウェアエンジニアを持たなくても良いです。

御社が実現したいDXに応じて、必要な人材は何かを考えて決めれば良いのです。また、各人材分類に求められる知識についても、自社の中で改めて定義してしまえば良いです。

ソフトウェアエンジニアも、何もプログラミングが必ずしもできないといけない訳ではありません。プログラミング等の知識を必要とせずに独自のアプリケーションを開発できるローコード、ノーコードと呼ばれる製品を扱えるだけで十分なこともありますし、場合によっては、Excelの関数が分かっているだけでも事足りるかもしれません。データサイエンティストの役割も、高度な統計学の知識がなくとも、ピボットテーブルを使った簡単な分析ができるだけで十分なケースもあるかもしれません。

DXリテラシー標準は、業種や役職を問わず、全員が共通して必ず身に付けなければならないものです。しかし、DX推進スキル標準は会社ごとに必要な人材、必要な知識を勝手に決めてしまえば良いのです。
経済産業省が出している人材類型は、あくまでそれを考えるための参考に使うのが正解です。

とはいえ、なかなか自社にとって必要なDX推進人材とは何かなんて、自分たちだけでは考えられませんよね?

そういったお悩みを持たれた方は、DX人材育成に精通した外部のコンサル会社や人材育成会社に相談してみてください。御社のDXに向けた想いを共有し、相談に乗ってもらうことで、きっとあなたの会社に必要なDX推進人材も定まっていくでしょう。

もちろん、私たちに相談していただいても、親身になってお話を伺い、対応させていただきます。


今回の記事が、少しでも皆さんのDXの理解に役立てば幸いです。
弊社でも、企業のDX支援をお手伝いさせていただいております。DXについての相談を常時受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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