小沢健二的クリスマスソング
なぜ小沢健二に惹かれるのか。言葉が美しく、普遍性が高い。そしてとにかく博識だ。『うさぎ!』などの著作を読めばよく分かるが、彼は世の中を知り尽くしている。そんな彼が切り取る詞は、非常に魅力的だと感じる。
師走ということもあり、クリスマスソングでも紹介しようと思う。1995年にリリースされたシングル『痛快ウキウキ通り』という曲。本人言わく、「何も起きないクリスマスソング」との事である。
歌詞の冒頭、語り手は恋人であろう「君」の願いを叶えるためにマフラーを巻いて街へ出かける。幸せなカップルが想像できるが、実はそうではない。
後の詞で明らかになるが、プラダの靴が欲しいと言う「君」とはまだ出会ってないのだ。街へ出た男は、1人喫茶店でワインを飲み、酔っ払ってしまうのである。
詞の主人公はダメな男だ。とてつもなく明るい曲調と裏腹に少し悲壮感も漂う。喫茶店で流れる『ポーギーとベス』なんかに特に感じる。何度か出てくる『アラビアンナイト(千夜一夜物語)』は、やや不穏な雰囲気を醸し出す。このセンスが最高。
いやしかしサビの詞がとても良い。「喜びを他の誰かと分かり合う!/それだけがこの世の中を熱くする!」と言うのは的確で普遍的だ。人によっては薄っぺらいとか感じるのかもしれないが、これはオザケンが歌うから良いんだろう。
詞の最後では道に唾を吐き、鼻水を指でこすりながら雪の中を歩いて帰っていく。
ちょっとダメな酔っ払いの歌、という解釈が個人的に結構しっくりきた。「痛快」という言葉が的確に用いられているのが分かる。痛い、そして快い。まさしくそんな感じがする。
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追記。
昔のMステで、井上陽水らに一石投じるオザケンが面白かったので。
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