2023年9月1日 「同日2回鑑賞やむをえず」
今日からはや9月で憂鬱かと思いきや、お気に入り映画監督ウェス・アンダーソンの新作『アステロイド・シティ』の公開日なのでゴキゲン。
早速朝イチの上映回に合わせて映画館へ。席を取り、座る。
失敗した。前の男性、背が高いし姿勢が良い。他の人より背もたれから飛び出た頭の面積が明らかにデカい。スクリーンの左3分の1が隠れている。ウェス・アンダーソン映画にとって致命的じゃん。
まあ、仕方ない。映画が始まる。どきどきわくわく。最初のカットから意外性と安心感。素晴らしい。しかし。1席空けて右隣の女性客のスマホからバイブ通知。続けて通知、さらに通知、またもや通知。気が狂いそう。
結局首を右に曲げて観たせいで数日前からの左首の寝違えがさらにひどくなった。
仕方ないので直後の2回目の上映も観た。ウェス・アンダーソンの映画なら続けて2回観るのもやぶさかでない。
2回観ても素晴らしい。作り込まれた人工的なセットとショット。ほとんど常に無表情なキャスト。シュールで洒脱なギャグ。登場人物の哀愁。入れ子構造のプロット。時代設定における憧れと意味。まさに、これぞ、ウェス・アンダーソン。すごいのは、基本的にコメディとしてのストーリー、それに貢献するセット・ショット・色彩・音楽。なのに、それがそのまま哀愁・感慨・感動と一体になっている。これは過去作でもそうだった。ウェス・アンダーソンの良いところ。
さらにホン・サンス監督『小説家の映画』。ホン・サンスは前に『イントロダクション』を観たきりで、これが2作目なのだけれど、ちょっと癖になる変さがある。
特別な事件が起きるような映画でなく、いや、出来事としては十分にいろいろ起きているのだが、登場人物の人生のうちのある日々を切り取るような映画。
観ながら、いろいろ考えてしまう。今の発話者の姿が見えないセリフ、この二人の間でだったの? そうは見えないな……。とか、そこがドラマになる場面なんじゃないの? そこそのまま切るの? そう……。とか、なんで急に怒り出すのよ、さすがに変じゃない? とか、なんかずっとぎこちないな……。とか、さっきこうするって言ってたのにそうしてないじゃん、とか。
不思議な映画。観たことがないタイプ。ちゃんと読み取るのは困難だけれど、なんだか癖になる。『イントロダクション』は何が何だかわからなかったけれど、今回でとっかかりを掴めた気がする。そうだといい。