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うつわ

讀賣新聞・編集手帳の担当者が変わってから5年くらい経つのだろうか。前任者と比べてはいけないのだが、時々ズレたことを書いているように思える。
先日の故・松本零士氏から新たな宇宙飛行士候補ふたりについての記事の締めくくにあった「どうか、鉄郎とメーテルになってください。」に違和感……私だけかなぁ? 

前任者の浅田真央ちゃんの記事は今でも胸アツ✨

「心が凋(しぼ)む」の凋。「凛(りん)として」の凛。意味するところは正反対だが、部首は同じである。漢和辞典によれば、“にすい”は氷を透かして見える筋目のことだという。 
凋んだ心のまま、おざなりに流すのか。それとも、凛として舞うのか。さあどっちだと、氷の神様もなかなか意地が悪い。その意地悪な問いに、完全燃焼することで答えた。ソチ冬季五輪のフィギュアスケート女子フリー、浅田真央選手(23)である。 
前日のショートプログラムに失敗し、メダルの望みが絶たれたなかで、ほぼ完璧な演技を見せて観衆を魅了した。フリーでの自己最高得点を更新している。 勝つために全力を尽くすのは、じつはやさしい。負けと決まったあとに、全身全霊を込めるのは誰にでもできることではない。その強い心にテレビの前で、にすいの言葉をもう一つ、「凄(すご)い」とうなった方も多かろう。 
思い出す五行歌がある、 <いっそ 大きく凹(へこ)もう いつか 多くを満たす 器になるのだ>(伊東柚月) 一夜にして、器をうれし涙で満たした人がいる。ときに金メダルよりも美しいものに出会うから、五輪観戦はやめられない。

讀賣新聞・編集手帳 2014年2月22日


うつわの小さいおやぢの戯れ言でしたm(_ _)m