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【すっぱいチェリーたち🍒】スピンオフ田中真人編#2

あんたも誰かの企画に乗っかって何か書くことってあるかい?

今回もこの企画に乗っかってみようかね。

企画ページ本体はこっち。

前回のはコレ。
スナック葵での真人の未来についてのやり取りの話だ。

で俺の持ちキャラはこいつ。
CV:大塚明夫を想像しながら読むと腹がよじれると評判w

今回のは久しぶりに一人称を息子の真人に変えての物語だ。
真人はCV:梶裕貴で読んでみてくれよな。


夜道

俺は考えていた。
圭子とのことを。

葵で父さんやガッキー、タカの話を聞いて思ったんだ。
「俺は自分のことしか考えてなかったんじゃないか」ってさ。

卒論はデータ部分の整理が残ってるだけだ。
後2,3日で終わるだろう。

そもそも俺はどうしたいんだ。
圭子は俺がどうあれば幸せになるんだ。

幸いにも時間はある。
圭子が高校を卒業するまでに1年ちょっと。
大学まで行った後なら更に4年。
そこまでに俺の生計を成り立たせる事は出来ると思う。

問題は幸せだ。

幸せにすること。
幸せにしてもらうこと。

それが両立していないといけない。

そんな事を考えながら圭子との出会いについてぼんやりと思い出した。

圭子との出会い

俺が圭子と出会ったのは本当の偶然だった。

たまたま大学の帰り道で気まぐれに1駅前で降りて散歩してみてたんだ。
ちょうど課題レポートに煮詰まっていて、頭の整理をつけたかったんだ。

歩くってのは頭の整理にはちょうどいいんだよ。
ありきたりの喧騒の中で歩くことで、逆に自分と世界が隔絶される。
電車の中だとどうしても自分が静止しているので、自分もその喧騒の一部になってしまう。

歩くと言う主体的動作の中で自分を意識しながら喧騒を「背景」に変えることが出来る気がするんだよ。

そして、俺は歩き始めて、一昨日の実験レポートのまとめ方について考え始めた。

やっぱ、あそこでフーリエ展開使って実験データを当てはめて近似値が収束するって方向性でまとめるのが良いか……。

そんなことをぐるぐると考える。

そんな一人の空間にノイズが交じる。

「なあ、いいじゃんか、俺らと遊びに行こうぜぇ」
なんか男子高校生っぽいなりをした3人のやつらが一人の女子高校生を路地裏で取り囲んでいる。
なんだこの昭和の安いドラマみたいなシーンは。

まあ、俺自身昭和に生まれていないから、昭和の安いドラマはネット動画で切り抜きで見るくらいしかしてないけどね。

くだらないことに時間を割くもんだ。
そのまま通り過ぎようと思ったんだが、少女の表情が目に入る。
明らかに涙目で、怖がっている様子だ。

なんだよもう。
俺はケンカ強くないんだぞ。

そう思いながら、やれやれと思いながら路地裏を目指して歩を進めようとした瞬間だった。

大型のバイクが突然後ろで止まる。
……銀色のV-MAX?
そして革ジャン、ジーパン姿のヒトがそのバイクから降りて路地裏を目指して歩き始めた。

そしてヘルメットのハズし右手に持つ。
広がる髪。
お、女?
あのデカいバイクを女が操ってたってのか。

そのままつかつかと歩を進めるその女。
本能的に危ないと思った俺は気がつけばその女に声をかけていた。

「そっちは危ない。行かないほうが良い」
「じゃあ、あんたはあの子を見捨てろっていうのかい?」

言葉で殴られた気になったのは久しぶりだ。
前は父さんに叱られたときだったか。

「……わかった。俺も行く」

なんであの時そんな事を言ったのか、今でもよくわからない。
だって、俺はケンカなんてしたこと無かったんだから。

そして、女は路地裏の男子高校生っぽい奴らにこう言った。

「やめなよ。みっともない。その子が怖がっているじゃないか」

男子高校生っぽい奴らの一人が言う。

「なんだ?代わりに遊んでくれるのか?」
女は無表情のまま言った。
「かかっておいで」
その言葉に逆上し、一人が女に殴りかかる。
「舐めんじゃねぇぞ!」
そう言って右拳を振り上げて女に走りかける。

やばい。俺がそう思ってとっさに女の前に走り出た。
動きを一瞬止める男。
「何だてめぇは」
「女性に拳を向けるもんじゃないよ」
そういって、両手を大きく横に広げる。
「この女性も、そこの女の子も、君たちは幸せを与える事が出来るのか?」
「幸せだと?」
頭をフル回転させる。

「仮にその子が君たちに暴行されたとする。
 そうしたらその子には一生つきまとうようなトラウマが植え付けらる。
 そんなことを君たちは望むのか?」
「御託を述べてんじゃねぇ!」

「いいから聞け!」

自分でもびっくりするくらいの大きな声が出た。
男子高校生たちも一瞬怯む。

「いいか?君たちが仮に暴行を行ったとして、この情報化社会だ。
 あっという間に君たちのことはネットに拡散される。
 そして、その情報はネット上にコピーし続けられる。
 決して消えることはない、デジタルタトゥだ。
 そんなリスクを犯してまで君たちはそこの女生徒をどうにかしたいのか。
 違うだろ!
 もっと自分と相手のことを考えろ!」

本当に自分が話しているのか現実感が無かった。

「………ケッ白けちまった。行こうぜ」

そう言って、男子高校生っぽいやつらは路地裏の向こう側に去っていった。
その姿が見えなくなって、俺はへたり込んでいた。
なんか女子高校生がお礼を言っていた気がする。

ただ、俺にはバイクの女が俺に言った言葉が耳に残っていた。

「あんたは言葉で殴るんだな」

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すんません。圭子取っちゃいました。
※年齢的、タイミング的な都合でw

参考にした話

#すっぱいチェリーたち
#歌えないオッサンのバラッド


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