おとぎ話のような戦史が教えてくれるもの
あんたは子供の頃に見たアニメってどのくらい覚えているかな?
中学生のころくらいに見たアニメってのは、普段は思い起こしもしないけれども、ふとした瞬間に思い出して、その物語が自分の判断基準になっているって思えたりするのが楽しいよな。
俺の中で、そんな作品の一つに上げられるアニメーション映画がある。
そいつがウインダリアというアニメーション映画なんだよ。
1986年の映画だから、34年前の作品だな。
そら歳取るわけだわ。
今回はこのウインダリアという作品を振り返りつつ、そのメインテーマである「約則」という歌について考えてみる回だ。
まあ、思い出話に付き合ってくれよな。
ウインダリアという作品
ウインダリアを見たことが無いってヒトが大多数だとは思うんだけれど、結構この作品はワリカシ俺の根っこにある作品だと思うんだよ。
もしか時間があるようなら、上の動画は全編見られるらしいから見て損はないと思うよ。
見返してみると、いのまたむつみのデザインってこの時点で完成されているよなぁ、とか、音楽の使い方が絶妙だよなぁとか、そう言うテクニカルな部分も気になるところだけれども、この作品のテーマが少年の俺の心を鷲掴みにしたんだよ。
この作品には実に多くの死が伴う。
そして、その死には約束が伴っている。
多くの約束は各々の事情で引き裂かれ、反故にされ、結果として多くの死が象徴的に描き出されている。
戦争という状況に引き裂かれた男女の物語だ。
「約束」の大切さを教えてくれた歌
そんな物語のメインテーマに据えられている歌が「約則」だ。
新居昭乃さんのデビュー曲なんだよな。この歌。
物語の中で、主人公のイズーはふとしたきっかけで英雄扱いされてしまう。
この英雄扱いされてしまうことで、イズーは自らの増長を抑えることができなくなってしまい、自らを戦争という状況の中に投げ入れてしまう。
結果としてイズーは妻のマーリンをその戦争のために失ってしまう。
マーリンを幸せにするための戦争は、イズーから全てを奪っていく。
そんな物語を象徴する歌なんだよ。
「約則」の歌詞を読み返す
この「約則」って歌の歌詞を読み返すと、なんというかたまらない気持ちになる。
一度だけきみに誓うよ 戻る朝を
出典:約則
物語の中で主人公のイズーは妻のマーリンに戻ることを約束して戦争に向かう。
そして、マーリンが生きている間にその約束は果たされることはなかった。
その前提でこの歌詞を眺めると、この歌自体がイズーが守ることが出来なかった約則そのものなんだよ。
イズーは守ろうと思えばマーリンとの約則を守る事ができたんだけれど、そうはしなかった。
それはイズーの増長そのものが招いたことなんだけれども、そのことをたった1行の歌詞が象徴している。
一度だけきみに誓うよ 僕の未来を
出典:約則
「僕の未来」なんだよな。
「僕たちの未来」じゃなくて。
戻ってくる「僕」の未来を誓うって読めるかもしれないけれど、この約則をしている時点でのイズーにあるのは功名心だけだった。
功名心は愛する妻の未来を置き去りにしてしまうほどの麻薬のような心なのかもしれない。
1986年という時代背景を加味すると、バブルでイケイケドンドンの世の中だった。
男たちはこぞって必死に出世をするために仕事をしまくっていた。
昼も夜もなく、家族の顔を見ることもなく必死に戦うように働いていた。
まさにマーリンを置き去りにしていったイズーと姿が重なるんだよ。
ウインダリアという作品は「約則」というキーワードを使って俺たちに「あなたはヒトを愛していますか?」と問いかけていたんだと思うんだよね。
そして、時代は変わって夫の稼ぎだけで家計を支えるってのが大多数を占めるような世の中ではなくなってきている。
ワーク・ライフ・バランスなんて言われているけれども、もしかしたらウインダリアという作品は34年前にそのことを危惧していたのかもしれない。
なあ、あんたはどう思う?
俺たちは、家族を、ヒトをきちんと愛することが出来ていると思うかい?