
【すっぱいチェリーたち🍒】スピンオフ田中真人編#35
あんたも誰かの企画に乗っかって何か書くことってあるかい?
今回もこの企画に乗っかってみようかね。
企画ページ本体はこっち。
前回のはコレ。
真人が家族を意識する物語。
で俺の持ちキャラはこいつ。
CV:大塚明夫を想像しながら読むと腹がよじれると評判w
今回も息子の真人視点の物語だ。
真人はCV:梶裕貴で読んでみてくれよな。
母さん
「ただいま」
「おう、おかえり」
珍しく父さんがいる。
「どうしたの?なんかあった?」
「うん?いや、ちっと近くの取引先に行く用事があって、ついでに昼飯を食いに帰ってた。もっかい会社に行くよ」
昼飯ってもう15時だぞ。
「おつかれさま」
俺はなんとなく感謝をしながら言った。
そうか。
感謝ってこういうことだよな。
何かをしてくれてありがとうということだけじゃない。
いてくれてありがとうってことなんだ。
自然と仏壇の前に向かう。
仏壇の位牌と母さんの遺影の前に座る。
ろうそくに火をともし、線香に火を移す。
鈴を鳴らす。
チーンという聞き慣れた音とともに手を合わせる。
俺の記憶にはまったくない母さんの遺影を眺める。
「母さんの料理もあんな味だったのかな……」
母さんの遺影に向かってぼそりと呟く。
それから頭を振る。
今の我が家の味は父さんと俺が作っているんだ。
それ以上でもそれ以下でもない。
まあ、なんか父さんの料理はどんどん手抜きになっていってる気がするけれど。
そんな事を考えながら笑顔に自然となっていく。
母さん、父さんは俺をここまで育ててくれたよ。
母さん、俺は結婚を約束する相手が出来たよ。
母さん、幸せってのは伝播するもんなんだね。
母さん。
俺を産んでくれてありがとう。
そんなことを祈って、俺は仏壇の前を去った。
「良かったね」
そんな声が聞こえた気がして不意に仏壇を振り返る。
そこにはいつもの位牌と母さんの遺影が飾られている。
「ありがとう」
今度はお辞儀しながら声に出して言ってみた。
父さん
リビングに戻ると、父さんは出かける準備をしていた。
「今日も遅くなる?」
「ああ、なんか適当に食べててくれ」
「わかった」
いつもの会話がかわされる。
「父さん、俺のこの一月の記憶は大切なものだと思う」
「そうか」
ぶっきらぼうな答えが返ってくる。
「でも今、それよりも大事なものをもらえている気がしたんだ」
「そうか」
「だから、俺は圭子と結婚するよ」
「そうか」
「今度の土曜日、圭子を連れてくるからスケジュール開けといて」
「分かった」
身支度を整えた父さんは玄関に向かう。
「真人」
父さんは玄関のノブに手をかけて言う。
「並大抵のことじゃないぞ」
「分かってる」
「ならいい」
そう言って、父さんは出かけていった。
なんだろう。
父さんは俺のことで微塵も不安を感じていないように思えた。
それは俺に対する信頼というより圭子に対する信頼ってのがあるような気がしたんだ。なんでそう思ったかはわからないんだけれどね。
「分かっている」こと
並大抵のことじゃない。
それは分かっている。
でもこれからどんなことが起こるのかなんて預言者じゃないんだから分からない。
俺が分かっていることは圭子を大切に思うことが俺の誠意だってことだ。
でも大切にするってどう言うことなんだ?
日々の生活費を稼ぐこと?
ときどき愚痴を聞くこと?
旨い料理を一緒に食べること?
笑い合うこと?
悲しみ合うこと?
たぶん、それ全部だ。
それをひとまとめにして言葉にするとどうだろう?
一緒にいること。
そうなるよな。
そうなると、さっきの細々したことを圭子にもしてもらわないといけないってなる。
なるほど、そりゃ並大抵じゃない。
別の個人である以上、各々の基準ってのは違くなるのが普通だもんな。
ましてや、俺と圭子は実質、一月も付き合ってない。
知らないことは山ほどあるはずだ。
スマホを手に取る。
LINEで圭子にメッセージを送る。
「明日、夕方にいつもの駅前で」
数秒後にスタンプで「了解」が送られてくる。
さて、明日までに俺は考えておかなきゃならない。
俺が何者なのかを。
------------
参考にした話
次は健一との会話の前準備。
覚悟。
友情。
そんな物語。
以下待て次号!