
【すっぱいチェリーたち🍒】スピンオフ田中真人編#18
あんたも誰かの企画に乗っかって何か書くことってあるかい?
今回もこの企画に乗っかってみようかね。
企画ページ本体はこっち。
前回のはコレ。
真人が圭子との記憶を失ってしまう物語。
で俺の持ちキャラはこいつ。
CV:大塚明夫を想像しながら読むと腹がよじれると評判w
今回も息子の真人視点の物語だ。
真人はCV:梶裕貴で読んでみてくれよな。
記憶
「ま、真人……」
女性は俺にまるで世界が終わったかのような眼差しを向けてくる。
どうしてそんなに悲しい目をするんだい?
女性はそんな悲しい目をするもんじゃないよ。
父さんがナースコールのボタンを押す。
すぐに看護師さんが駆けつける。
「どうしました?」
「息子が目を覚ましました。覚ましたんですが……」
看護師さんは部屋を満たしている異様な空気感を見て取ったようだ。
「息子の記憶が……飛んでしまっているようです。大切な記憶が……」
看護師さんは俺の脈やバイタルを確認すると近くの別の看護師さんに向かって話した。
「ERの児玉先生を呼んできて。ASAPで」
すぐに医者が俺の確認を始めた。
目の瞳孔の確認、問診による受け答え、MRも撮ってたと思う。
その間、ずっと父さんとその女性は傍らにいてくれた。
嫌でもわかった。
この女性にとって、俺は大切なヒトなんだろう。
でもおかしいな。
俺は一人っ子だ。
俺を生むときに母さんは命を落としてしまったし、父さんは再婚する素振りすら見せない。
この女性はずっと俺を見ている。
ああ、そうか。
俺はこの女性のことを忘れてしまっているんだ。
だとしたら、俺はなんて残酷なことをこの女性にしているんだ。
「父さん……」
「何だ?真人」
「どうやら、俺は最低の人間になってしまったみたいだ」
診断
しばらくして、医者がベッド脇に来た。
「結論から言います。
今、行った検査では真人さんの脳に異常は見られません。
ただ、問診の様子ではここ一月ほどの記憶が無いようです」
そうだ。卒論提出期限もうすぐじゃないか。
でも左手がこれだとしんどいかもしれないな。
「父さん、ごめん。もしかしたら俺、今年卒業出来ないかもしれない」
「なんでだ?」
「卒業論文の締切にこの左手じゃ間に合わないかも……」
そこで女性が割って入ってくる。
「大丈夫。もう卒論は提出したって真人は言ってたよ」
大粒の涙を浮かべながら女性はそう言った。
「今の段階では原因はわかりません。
脳に損傷が無いのは確認しました。
なにかのきっかけで記憶が戻ることもあるかもしれないです。
しかし、現状では楽観的なことを申し上げることは出来ないのです」
そして医者は続けてこう言った。
「幸い、体の損傷は左腕を骨折している以外は擦り傷が見られる程度です。
本日もご家庭にお戻りいただけると思います。
しかし、念の為今日はこちらで息子さんをお預かりします。
明日以降脳神経外科の診断を再度うけていただきます」
圭子
一通りの医者の説明をうけて父さんは言った。
「聞いてのとおりだ。
今日はもう、休め」
「父さん……」
「なんだ?」
「この女性と二人で話させてくれないか?」
「……分かった」
そう言って父さんは病室から出ていった。
「迷惑をかけてしまったみたいですね。
申し訳ない。
そしてありがとう」
俺は女性にそう言った。
そう言った瞬間、女性は椅子に座りながら嗚咽を漏らした。
「ど、どうしました。俺、何かあなたを傷つけてしまいましたか?」
俺がそう言うと女性は目を上げた。
「私は圭子。あなたの恋人。そして婚約者。
だから、そんな言葉遣いはやめて!」
こ、婚約者!?
そこから、俺たちの記憶をたどる旅が始まった。
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参考にした話
圭子の立場にたつと、本当にいたたまれない。
何から始めれば良いのか。
どうすれば真人を取り戻せるのか。
全くわからないんだから。
※書いているのは俺なんだけれど