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今という時間の使い方

家に帰って、真人にLINEする。
「会社作ることになった」
シンプルにそれだけ送る。
すぐさま通話がかかってくる?
「どゆこと?」
「今月末で今の会社を辞めて、新しい会社を作る。まあ、手続きとか時間かかるかもだから、設立日はまだ調整段階なんだけれど、一応真人には伝えておこうと思って」
「斎藤との話は進んでんの?」
「いや、当面の仕事のあては付いたんで、それで軌道に乗ってからまた相談かな」

少し間があって真人が言う。
「そういうのって、筋通しておいたほうが良いと思うんだけど」
なんつうか、真人育ったよなぁ。
「確かにそうだ。現状を伝えたいから斎藤くんと、またわたりを付けてくれないか?」
「了解」


次の日の朝

さて、今日はトールの有給消化の始まりだから、会社設立の手続きを始めるってことだよな。
と思ってLINEのメッセージを確認する。
トールからは「今晩、葵で状況共有しよう」とメッセージが入っていた。
了解のスタンプを返す。

真人からもメッセージが入っていた。
「今晩、20時斎藤通れで葵に行く」
こっちも了解のスタンプを返す。

ん?巴さんからもメッセージが入ってる。
「今晩、20時時間取れます?」
おうおう、関係者揃い踏みだな。
「了解です。葵で20時で」
返信をする。

ついでに真人にもメッセージする。
「クライアントもその場に来ることになった」
当然トールにもメッセージを入れる。
「巴さんも20時に葵にくるそうだ。多分作業開始タイミングの話だろう」
二人から「了解」のスタンプが送られてくる。

さあて、どうその場のコントロールファシリテーションしたもんかね。

状況整理

日中はフォーマットの再点検、とPA会報告書のブラッシュアップ、地味に今の会社の仲間からの相談に乗る。ついでに三田さんの様子とか聞く。
なんか三田さんは電話とメールでてんやわんやみたいだ。

思うんだけれど、電話ってある意味暴力だよな。
ヒトの時間を強制的に奪い取る暴力。
結果として仕事の能率を下げるやつだ。
本末転倒甚だはなはだしい。

そんなことを思いながら、三田さんの方からの仕事をどう作るかとかも考える。
実際今、動いているプロジェクトを会社のシステムで確認する。
プロジェクトマネージャーとして、経歴が薄いプロジェクトは……この辺りか。
いずれにせよWBSやることとしてマネジメントフォーマット調整は必須だろう。費用に反映しないとダメなんだろうな。

ただ、当たり前だけれど規模が小さいからそれ一本でってわけにもいかない。
巴さんのところだって同じだろう。
ぶっちゃけ、4プロジェクトくらいのPMOを掛け持ちするくらいの話にしないとならない。
こりゃあ、フォーマット押し付けて、現場にはそれでやってくれって言うしか無いかなぁ。
でも、今使ってるフォーマットもあるだろうし、そしたらそのフォーマットに合わせてマクロ組み直しか。
もしくは、今までの記録をクラウドサービスに転記してそっちで回してもらうか。

まあ、三田さんも巴さんもその辺の統一化ってのは望んでいるはずだから、そいつで提案していくか。

ぶっちゃけ、仕様書だって、Officeの形式で書いていくってのは非効率だし、フリーで書かなきゃならない部分を最近ならAIで作文することも増えるだろう。
顧客へのアクセスもクラウドにしておけばシンプルになるし、何しろプロジェクト完了後のデータ削除の問題もアクセス権の制御でコントロール出来る。

新会社から他の会社に委託する場合も、すぐさま情報へのアクセスを制限出来るってわけだ。

普段のやり取りはSlackでやるとして、課題との紐づけはasana。
仕様書は当面、各社フォーマットがあるだろうからOneDrive。

巴さんのところと三田さんへの話は会社設立の状況報告ってことくらいしかできないな。
何しろ、巴さんのところの手の内を三田さんが知っちゃーダメなやつだ。

問題は斉藤くんの話だよなぁ。
なんつーか話のカテゴリが違いすぎる。
斎藤くんにも会社設立の状況だけ共有しておくか。
でも、それだと、巴さんにしても三田さんにしても「彼は?」って話になるな。

ダメだ。これは分けないといけないやつだ。

真人にメッセージを入れる。
「悪い、別件が入った。翌々日以降で斉藤くんと調整してくれないか?」
すぐさまメッセージが返ってきた。
「了解。なんかてんやわんやだな」

全く、俺の状況をなんかで監視してんのか?

「よろしくたのむ」

と、英語に訳せない日本語でメッセージを返す。

三田さんと巴さんとトールにも三者が同席する旨のメッセージを送る。
三田さんと巴さんは面識があるが、トールとは初対面だからな。
その辺から話し始めるか。

そんな風に有給消化という響きとは程遠い目が回るような時間を過ごした。

#歌えないオッサンのバラッド

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