
【すっぱいチェリーたち🍒】スピンオフ田中真人編#13
あんたも誰かの企画に乗っかって何か書くことってあるかい?
今回もこの企画に乗っかってみようかね。
企画ページ本体はこっち。
前回のはコレ。
真人が圭子への思いをつのらせていく物語。
で俺の持ちキャラはこいつ。
CV:大塚明夫を想像しながら読むと腹がよじれると評判w
今回も息子の真人視点の物語だ。
真人はCV:梶裕貴で読んでみてくれよな。
圭子
駐車場に向かうまで、俺はどう話を切り出したものかを考えていた。
200万と言う金は、俺たちの恋愛を一気に生活に切り替える力がある。
おいそれと話せることじゃないってのは間違いない。
でも、話さないって選択肢はない。
それは父さんに対しても、圭子に対しても侮辱にあたる。
そう思った。
「なあ、どのへんを走るんだ?」
「どこでも良いけれど、そうだなぁ。
海沿いに行ってみる?」
「この季節にかよ。寒いぜ?」
「海沿いの公園までだったら、それほどでもないよ。
防風林があるからね」
「OK、そうしようか」
駐車場につくと、圭子はV-MAXにまたがり、エンジンを吹かす。
重い音。
なんか、前マフラーを交換したとか言ってたっけ。
排気量を調整することで、エンジンがごきげんになるとかなんとか。
バイクについてはド素人の俺にはさっぱりだったけれどね。
ひとしきりエンジンの具合を見ると圭子は俺に顎で「乗れ」って合図してくる。
へいへい。お嬢様のいう通りにさせていただきやす。
俺は後部座席に乗っかって、圭子の腰に手を回す。
「行くよ」
圭子がそう言ってV-MAXを海に向かって走らせ始めた。
疾走る
街中を走っているときは、普通に車が流れているので、無理にスピードが上がることはない。
夜の明かりが流れる様に後ろへと移ろいで行く。
そして、気がつけば車通りがそれほどない海沿いに出る。
圭子の言った通り防風林のおかげであまり海風は感じない。
「ちゃんとつかまって」
圭子が言った次の瞬間に直線道路で速度を上げる。
一気に風圧が体を持っていきそうになる。
「次の右カーブはきついから、真人はアウトサイドに重心を移して。私はインサイドに重心を移すから」
風の音でよく聞こえない。
でもなんとなく圭子と逆の重心にしろってのは分かる。
「分かった!」
すごい。
カーブでバイクと一体になっている感覚を味わう。
こりゃあ、圭子が夢中になるわけだ。
感覚に酔いしれているうちに、俺たちは海沿いの公園にたどり着いた。
海風
海沿いの公園は海が一望できる代わりに、この季節は海風が直撃する。
体の芯から熱が持ってかれるんだよな。
ただ、俺はさっきまでのバイクの感覚で体に熱がこもっている感じがしていたからちょうどいい風のように感じた。
圭子も同じらしい。
「真人、ホントにバイク乗ったことなかったの?」
「無いよ。なんで?」
「普通アウトサイドウェイトシフトなんて出来ないよ」
「まあ、何度か圭子に乗せてもらったしね」
しばらく海風で火照った体を冷ます。
さて、話すか。
「圭子は高校出たらどうするんだ?」
「どうって?」
「進学するのか、働くのか。もしか、放浪の旅に出かけるとか」
「放浪の旅はいいけれど、そうは考えてないかな」
笑いながら答える圭子。
しばらくの沈黙の後、圭子が話し始める。
「私さ。スタイリストになりたいんだよね」
初めて聞く話だ。
「スタイリストになって、色んなヒトに自信を持たせてあげたい」
「自信?」
「そう、自信。女のヒトは特にそうだと思うけれど、美容って『自分がこの世界で生きていて良い』って思う、最短経路だと思うんだよね」
「生きていて良いヒトを増やしたい……ってこと?」
「そうなるかな。チームをやってた時も、みんな結局は誰かに認められたいって思いで疾走ってたと思うんだ」
確かに、あの感覚は自己肯定につながるってのはわかる気がする。
「でも、当然だけれど、事故ることもあれば、他のチームとぶつかることもある。傷つくことが自分の存在意義なんて悲しいじゃない」
「そうだな」
俺は素直に答えた。
圭子の言葉には力と意味がある。
だからこそチームをまとめ上げてきたってのがあるんだろう。
「スタイリストになるためにはどうするもんなんだ?」
全然その業界の知識がない俺は聞いた。
「そうだなぁ。専門学校に行って、どこかの事務所に就職して何年か下積みして、徐々に仕事を任される感じかな」
「なら専門学校の学費が必要になるんだな」
「そうだね。なんとかバイトでやりくりするつもり」
ご両親には頼らないってことなのか。
それが、ご両親への愛情ゆえなのか。嫌悪ゆえなのか。
まだ俺にはわからない。
「なあ、その学費。俺にも負担させてくれないか?」
驚く圭子。
「何……を言ってるの?」
「とりあえず俺の手元にいくらかの金はある。
そして、圭子の夢を実現させるためには金が必要だ。
なら、その金が夢を叶える原資になるってのは悪い話じゃない
そう思ったんだ」
「ダメ」
圭子は即答した。
「コレは、私の夢。だから私の力で勝ち取るの」
まあ、圭子ならそう言うと思った。
だから俺の口は本当に自然に言葉を紡いだ。
「なら、二人の夢にすれば良い」
「どう言うこと?」
圭子が首を傾げる。
「結婚しよう」
------------
参考にした話
ようやくこのシーンにたどり着けた。