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【すっぱいチェリーたち🍒】スピンオフ田中真人編#38

あんたも誰かの企画に乗っかって何か書くことってあるかい?

今回もこの企画に乗っかってみようかね。

企画ページ本体はこっち。企画も残るところ2日。

前回のはコレ。
圭子の挨拶の物語。

で俺の持ちキャラはこいつ。
CV:大塚明夫を想像しながら読むと腹がよじれると評判w

今回も息子の真人視点の物語だ。
真人はCV:梶裕貴で読んでみてくれよな。


帰り道

家のドアが閉まると圭子は開口一番こう言った。
「緊張した~」
「おつかれさま」

まあ、よりによってあの父さんだからな。
「でも話しやすかった」
意外な言葉が返ってくる。
「なんで?」
「だってほとんど真人と同じなんだもん」

そして二人はまた大口を開けて笑った。
当分、父さんを超えることはできそうにないな。
だってそうだろう?父さんと俺は同じ道を歩むんだから。
父さんが歩むスピードを緩めない限り、俺は追いつけない。
小学生でもわかる算数だ。

そして、おれは父さんに歩みのスピードを緩めたりしないで欲しい。
すなわち、俺が父さんに追いつくことは父さんの限界を知るってことになる。
それは、俺の限界を一緒に見ることになる。

俺は俺の限界を知るほどまだ強くない。

でも、その時はいつか来る。
「覚悟しないとな」
「結婚のこと?」
「大きな意味ではそうかもな」
圭子は少し考えて言う。
「二人なら大丈夫だよ」

宇利くん

そんな事を話しながら歩いていると、正面からなんかゴツい高校生が歩いてくる。
たしか圭子が通い始めた田梨木高校の制服だ。
「あ、宇利くん」
圭子が声を掛ける。
中層マンションの建設をしているところの脇の道路だった。
「圭子……さん」
明らかに目線をそらす。
おいおい、高校生。
それじゃ圭子となんかあったって言ってるようなもんだぞ。
「……どう言う関係?」
こっそり圭子に聞く。
「クラスメイトの宇利くん。こっちは私の婚約者の真人」
瞬間、宇利くんのあごが落ちる。
「こ、婚約者!!?」
「まあ、結婚は私が卒業してからだけれどね」
こいつ、ぜってー良いやつだ。
隠し事が出来ないタイプって言っても良い。

その時だった。
ギシリ。

嫌な音が聞こえる。

瞬間上を見る。
ワイヤーに吊るされた鉄骨が揺らいでいる。

「危ない!!!」
俺は反射的にその男子高校生にタックルをする。
「うお!!」
虚を付かれた男子高校生、宇利くんは俺ごと体をふっとばされる。
その次の瞬間、俺の足ギリギリのところに鉄骨が落ちた。

「圭子!」
見ると尻餅をついているけれど無事みたいだ。
「君!」
続いて男子高校生を見る。
不意のタックルで受け身がうまく取れなかったみたいだけれど、頑丈そうな体はその衝撃を受け止めてくれたらしい。
「な、なにが?」
ただ、状況は飲み込めてない。
俺はだまって後ろの鉄骨を顎で示す。

「う、うおお!!なんじゃこりゃー!!」
高校生は立ち上がる。
ジーパン刑事かお前は。頑丈な体ってのは羨ましい。
俺なんて、地面に自分の体が叩きつけられただけですぐには立ち上がれなかった。

ギシリ。
また音がした。

「やばい!!」
高校生が叫んで俺を担ぐ。すごい力で俺の体が肩に担がれる。
そして全力疾走でその場から離れる高校生と俺。
まあ、俺は担がれてるだけだけど。

直後に鉄骨が落ちた衝撃に合わせてビルの外壁が落ちる。
「圭子!!!」
俺は担がれるまま噴煙の向こうを凝視した。

噴煙の向こう

俺はもがいて高校生の肩から降りた。
そのまま圭子がいるはずの噴煙の向こうに走る。
「危ねぇ!」
高校生の声が聞こえる。
構わず走る。
後ろに「ドン」という音がする。
構わず走る。
圭子。圭子。圭子!

それだけを思って走る。

噴煙を抜けるまでの時間はまるで永遠のようだ。
いつまで経っても圭子のもとに行けない。
そんな錯覚があった。

噴煙がようやく前から消えていく。
そして、そこには尻餅をついたままの圭子がいた。
「う、うわぁぁ!!!」
俺は言葉を使えなくなっていたんだろう。
ただ、泣き叫んで圭子を抱きしめた。
「う、うわぁぁん!!」
圭子も泣き叫んだ。

圭子が無事だった。
それだけで、俺は何の神様かわからないが、神様に感謝をした。

「ありがとう。助かってくれて」

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参考にした話

#すっぱいチェリーたち
#歌えないオッサンのバラッド

二人の覚悟。
それを見て確定する失恋。
なんつーか、ちゃんと失恋する物語を書けて良かった。

以下待て次号!

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