韓国のひとりの主婦がマルクスの「資本論」を読んだらどうなった?
1月に刊行した、韓国在住のひとりの主婦によるエッセイであり、資本主義と家事の関係をめぐる読書ガイドでもある『主婦である私がマルクスの「資本論」を読んだら』(チョン・アウン著、生田美保訳)が、女性たちを中心に共感を集めています(◆チョン・アウンさんの日本初のインタビューは、好書好日のサイトからお読みいただけます)。
小説家の柚木麻子さんからは下記のような応援コメントを頂戴しました。
「出産したばかりの頃、社会やジェンダーの本を読むと、家事育児をしている自分が責められているように感じた。 チョン・アウンが私が立ちすくんでしまったその先にいく。
『何故この本に傷つくのか? この本に励まされるのは何故か?』
一冊を通じて得た違和感や学びを武器に、次々と本を手に取り、家事労働を無償にしなければ立ち行かない、 この社会の真実をつまびらかにしていく彼女は、私にとってのヒーローだ。」
──柚木麻子(小説家)
本書に収録されている、チョン・アウンさんから日本の読者に向けたコメントを、ここで特別公開いたします。
* * *
日本の読者の皆様へ
私は宮部みゆき、上野千鶴子、石川康弘といった日本の作家の熱狂的な読者です。これまで日本の作家が書いた本を読みながら、韓国社会と似ている日本社会の姿に驚くことが多々ありましたが、このたび『主婦である私がマルクスの「資本論」を読んだら』で日本の読者の皆さまにお目にかかることになり、とても嬉しく、ドキドキしています。一見、女性は自分の住んでいる国にしばられているように思えますが、近くで見ると国境を越えて互いに多くの影響を与えあっています。現代の女性は資本主義と家父長制のあいだにのびた険しい道を、曲芸でもするかのように危なっかしく歩いていかなくてはなりません。その険しい旅路に『主婦である私がマルクスの「資本論」を読んだら』が少しでも助けになることを、そうして私たちがともに道を広げ、新しい道を作っていけることを願っています。こうして出会えて嬉しいです!
チョン・アウン 정아은
◆あわせて読みたい1冊
『二重に差別される女たち ないことにされているブラック・ウーマンのフェミニズム』 (ミッキ・ケンダル著、川村まゆみ著)
《書誌情報》
『主婦である私がマルクスの「資本論」を読んだら 15冊から読み解く家事労働と資本主義の過去・現在・未来』
チョン・アウン=著 生田美保=訳
ISBN: 978-4-86647-189-1
四六・並製・256頁 本体2,200円+税
目次
第1章 主婦たちの暮らす離れ島 「家で遊んでるんだって?」
主婦たちの住む世界はどうしてこうも違うのか
ソースタイン・ヴェブレン『有閑階級の理論』
もう一度あの頃に戻るとしたら、やっぱり会社を辞めるだろうか
レスリー・ベネッツ『女にとって仕事とはなにか』
私はどうして料理が嫌いになったのだろう
ラ・ムンスク『専業主婦ですが』
第2章 問題の核心は”カネ"
私が生きている世界はどんなところか
カール・マルクス『資本論』
私はなぜに会社を懐かしがるのか
ゲオルク・ジンメル『貨幣の哲学』
どうして私はニュースに出てこないのか
カトリーン・マルサル『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』
3人の子どもを育てあげた専業主婦はなぜ年金をもらえないのか
ナンシー・フォルバー『見えざる胸』
第3章 資本主義社会で女性として生きるということ
誰が、なぜ、女性に火をつけたのか
シルヴィア・フェデリーチ『キャリバンと魔女』
誰が、誰に、依存しているのか
マリア・ミース『国際分業と女性―進行する主婦化』
共存のためになにをすべきか
パク・カブン『フォビアフェミニズム』
内側の見えない自分をどうのぞき込むか
ロイ・バウマイスター『消耗する男』
第4章 境界線を越えたところの世界
なぜ、家事労働に賃金が必要なのか
シルヴィア・フェデリーチ『革命のポイントゼロ』
尼僧が『父親授業』という本を出したらどんな反応がくるか
法輪『母親授業』
非婚女性と既婚女性は連帯できるか
キム・ハナ、ファン・ソヌ『女ふたり、暮らしています。』
主婦はなぜ家族のことしか考えないのか
ソ・ヨンナム『たんぽぽ麺屋』