富裕層が集まる「UAE」の金融市場を解説 - 債券、株式、投資信託
UAE(ドバイやアブダビ)は不動産市場が目立ちますが、世界の富裕層の資産運用先としても有力候補になっています。日本のみならず、シンガポールや香港からUAEへ移住、資産運用先を移転する動きも見受けられます。このnoteでは、UAEでの資産運用についても今後、発信していきます。
この記事はこんな人に向いています。
✅ 資産の運用先を探している
✅ UAEの金融市場に興味がある
✅ 個人トレーダーとして移住先を探している
富裕層の移住者数 世界No.1
UAEは、2024年世界で最も富裕層が流入している国です。約6,700名が流入しています。全体の流動数の15.8%がUAEに移住しています。一方、中国からは15,200名、イギリスから9,500名、インドから4,500名が流出しています。
世界の富裕層がUAEに移住する際、資産の一部をUAEに移します。ファミリーオフィス、プライベートバンクなどの資産管理会社を経由して、UAEの金融資産や不動産で資産を移転していると考えられます。
その証拠に、UAEでは、ファミリーオフィスの設立が急増しており、ドバイとアブダビは富裕層や超富裕層の新たな資産運用拠点となっています。
UAEの債券市場
UAEの債券市場は、過去数年で大きく成長しており、国際的にも注目を集めています。
政府債券の発行増加
近年、UAEの政府はインフラ投資や経済多様化のため、政府債券を多く発行しています。特にアブダビとドバイは、資金調達のための債券発行が増加しており、これらの債券は安定した利息を提供し、投資家にとって魅力的です。
UAE政府が発行するソブリン債:UAEも政府として債券を発行しています。2033年9月満期の米ドル建て10年債の募集(15億ドル)では、利回りが4.917%でした。
アブダビ政府債券:アブダビ政府は、その豊富な石油収入と強固な経済基盤から、国際的に高い信用格付け(S&PでAA、Moody'sではAa2)を維持しており、リスクの少ない投資対象として見られています。
ドバイ政府債券:ドバイは観光や不動産開発で急速に成長しており、政府債券の発行によって都市開発やインフラプロジェクトの資金を調達しています。
企業債券の発行
UAEの企業は、特に石油・ガス、金融、不動産セクターで債券発行を増やしています。例えば、エミレーツ航空やDEWAなどの大企業は、長期的なプロジェクトに資金を調達するために債券を発行しています。2024年時点で、UAEの企業発行債券の総額は145.7億ドルに達しました。
ドバイ電力・水供給公社(DEWA)
DEWAは、ドバイのエネルギー供給を支える重要な企業で、過去には7.375%のクーポン利回りで発行された債券も存在します。
エミレーツ航空(Emirates Airline)
エミレーツ航空は国際的に著名な企業で、国際市場でもドル建て債券を発行しています。2023年には、エミレーツ航空の債券の一つ(2043年満期)が5.25%のクーポンで発行されています。
イスラム債券(スークーク)市場
UAEでは、イスラム法に準拠した債券であるスークーク市場も成長しています。スークークは、伝統的な債券とは異なり、利息ではなく資産の共有に基づく仕組みで発行されるため、イスラム教徒にとっても投資可能な手段です。UAEはスークークの主要な発行市場の一つであり、特に湾岸諸国やアジアからの投資家に人気があります。
UAEの株式市場
UAEには、大きく3つの取引市場があります。近年、IPOが盛んに行われており、LuLuスーパーマーケットなど外国人起業家の企業が上場する事例も増えています。
1. アブダビ証券取引所(ADX: Abu Dhabi Securities Exchange)
設立年: 2000年
所在地: アブダビ
市場規模: 2024年現在、時価総額は約5000億ドルを超え、中東地域では最大級の市場の一つです。
上場企業数: 約70社(2024年時点)
特徴:
アブダビに本拠を置く企業が多く、特にエネルギー、銀行、通信といったセクターが強いです。
世界最大級のソブリン・ウェルス・ファンドであるアブダビ投資庁(ADIA)も関与しており、投資の一大拠点とされています。
代表的な上場企業:
First Abu Dhabi Bank (FAB): UAE最大の商業銀行。
Etisalat: UAE最大の通信事業者。
TAQA (Abu Dhabi National Energy Company): エネルギー・ユーティリティ部門で強力な存在感。
2. ドバイ金融市場(DFM: Dubai Financial Market)
設立年: 2000年
所在地: ドバイ
市場規模: 2024年時点での時価総額は約1500億ドル。
上場企業数: 約65社
特徴:
DFMは中東・北アフリカ地域(MENA)で初のシャリア(イスラム法)準拠の証券取引所として設立されました。
金融、通信、不動産といった多様なセクターに上場企業が集中しています。
透明性と効率性を重視しており、外国人投資家にも広く開かれています。
代表的な上場企業:
Emaar Properties: ドバイモールやブルジュ・ハリファを開発した不動産開発会社。
Dubai Islamic Bank: イスラム系の金融機関。
Emirates NBD: UAE最大の金融機関。
3. ナスダック・ドバイ(Nasdaq Dubai)
設立年: 2005年(旧称: ドバイ国際金融取引所)
所在地: ドバイ国際金融センター(DIFC)
市場規模: 時価総額は約1000億ドル以上。
上場企業数: 約30社
特徴:
ナスダック・ドバイは、DFMの傘下です。
国際的な企業やデリバティブ(派生商品)、債券(特にイスラム債の「スーク」)が多数上場しているのが特徴です。
代表的な上場企業:
DP World: 世界的に有名な港湾運営会社。
Emirates REIT: ドバイ初のREIT。
Orascom Construction: エジプトに本拠を置く建設企業。
不動産金融市場
UAEにも不動産担保証券(MBS)や不動産投資信託(REIT)商品が存在します。まだ、世界の主要な市場に比べると発展途上ですが、長期的に成長している市場であることは確かです。
不動産担保証券(MBS)
ナスダック・ドバイにはMBSも存在しますが、あまり活発でないため今後の発展が期待されます。
不動産投資信託(REIT)
いくつかの主要なREITがあります。有名なものは下記の2つです。
Emirates REIT
Emirates REITは、ドバイを拠点にした最初のREITであり、商業不動産、オフィスビル、教育施設などに投資しています。株式はナスダック・ドバイで取引されており、投資家に対して安定した配当を提供しています。ENBD REIT
Emirates NBD Asset Managementが運営するENBD REITは、主にドバイの商業不動産や住宅不動産に投資しています。多様な不動産ポートフォリオを持ち、定期的な収益配分を行っています。こちらもナスダック・ドバイに上場しています。
まとめ
UAE(ドバイ、アブダビ)では金融市場の成長が著しく、世界の投資家や富裕層の資産運用先として利用されています。特に、資産があればビザが取りやすいためUAEが移住先として注目されています。
背景には、UAEの通貨ディルハムのポテンシャルの高さも関係しています。
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ディルハムは日本人には馴染みがない通貨ですが、ポテンシャルや歴史を知りたい方は下記の記事もあわせてお読みください👇
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