2拠点生活のススメ|第4回|散歩で街を知り、サーフィンで人を知る
徳島の街を歩いていて、感じること
もともと旅に出ても観光地より、普段着の街を観察して歩くのが好きだ。スーパーに買い物に行くときも、いろいろ道を変えて歩いてみたりする。徳島市内はほとんど坂が無く、川も多いので、歩いていても苦にならず変化があって楽しい。どういう訳だか、建築デザイナーが趣向を凝らした家が多く、ついつい立ち止まってジロジロと見てしまう。暮らしにこだわりが強い地域なのか、ポストに入るチラシもほとんどが住宅関係のものだ。それも建築家主体の家が多く、チラシのデザインも洒落ている。
また、やたらと病院に出くわす。こんなにたくさん病院があって需要があるのだろうか。時々お世話になる整体師さんに聞くと意外な答えが返ってきた。「徳島は14年連続、糖尿病全国1位なんですよ。濃い味付けを好むからかな、ラーメンもそうでしょ。」確かにすき焼きのような甘辛い肉が入った濃いスープ、それが元祖・徳島ラーメンの特徴。海上がりでお腹がすくと、かなりの確率でこのラーメンを食べる。味が濃いので白飯も進んで、おっさんにはたまらない一品だ。「それと運動不足もあるんでしょうけどね。」と整体師さん。そういえば散歩中、街を歩いている人にほとんど出くわさない。徳島は47都道府県の中で唯一電車(架線)の走っていない県。電車移動が当たり前の大阪とは違い、移動手段はほとんどが車で家族に3台なんて当たり前。どこに行っても必ず広い駐車場がある。髪を染めに行く美容院の若い女の子に聞いても「数百メートル先のコンビニにも車に乗って行く」とのこと。いくら近くても歩くという選択肢は無いそうだ。通勤も皆さんほとんどが車、タクシーよりも運転代行が幅を利かせているのもうなずける。
前回の記事で都道府県魅力度ランキング46位なんていうのを紹介したので、名誉挽回・徳島の全国1位を集めたリンクも張っておきますね。ぜひご覧ください。
素材の良さが一番、徳島のグルメいろいろ
味の濃い元祖・徳島ラーメンだけでなく、徳島にはいろんなタイプのラーメンが数多く存在。香川がうどん県ならば、徳島はラーメン県といえるかも。工夫を凝らした進化形の徳島ラーメンや魚介系の鯛塩ラーメンなど、その多様さとクオリティの高さは半端ない。地元の人にどこが美味しいか尋ねると、皆さんそれぞれ押しのお店があって、答えはバラバラ。それだけたくさんの美味しいラーメン店があるということ。徳島に来られた際には、ぜひ自分好みのラーメン店を探してみて欲しいものです。
そして徳島が誇る鶏の最高峰・阿波尾鶏。焼き鳥はもちろん、骨付き鶏や鍋料理などなど、食べれば納得、突き抜けたうまさです。そして以外と知られていないのが鱧(ハモ)。大阪や京都に流通している鱧の多くは徳島産とのこと。新鮮で美味しく、しかもリーズナブルに頂けるのが嬉しい。個人的には鱧の天ぷらが一押し、鍋のあとの雑炊もたまりません。
そうそう、徳島人の食卓に欠かせない「すだち」を忘れていました。徳島に来るまであまり気に留めたこともなかったのですが、爽やかな酸味と清々しい香りはまさに万能。今やスダチ無しの焼酎は飲めないカラダになりました。少しお高いイメージもあるかと思いますが、8月中旬ぐらいから出回る露地物は、地元では袋に10個以上入って150円ほど。焼き魚や刺身に絞るのは当たり前、うどんや塩ラーメンに入れても最高、冷蔵庫の常備品です。他にも、お米も美味しいし、野菜は鮮度が抜群で味が濃い。スーパーで売られている手頃な値段のお刺身の何と美味しいこと。夕方になるとさらに安くなって新鮮な鳴門の鯛が200円ほどで買えちゃうんですよね。とにかく肉も野菜も魚も鮮度抜群なので、焼くだけ、蒸すだけといったシンプルな料理が一番。食い倒れの街・大阪も素材の良さでは、とてもかなわないですね。
懐の深さはあいさつに表れる
市内のサーファーたちは、朝の出勤前や仕事終わりなど、週末以外の短い時間でも毎日海に通ってくる。私も滞在中は毎朝海に出かけるので、顔を見ると「こんにちは」と自然に挨拶を交わすようになった。シャワーの順番を待っていても、去り際に「どうぞ」とか「お先でした」とか声を掛けてくれる。毎日なんとなく顔は合わすけれど名前も知らない人たち。こんな風に誰にでも挨拶するのって小学生以来のことかも・・・気分がいいものですね、忘れていました。
徳島に拠点を開いて半年ほど経ったある日、海から上がって着替えていると、家路につくサーファーの車が私の前で明らかにスピードを緩め窓を開けた。えっ、と思って思わず顔を上げると「また明日!」と手を上げて去って行った。確かに良く顔を見かけはするけど、名前もしらない地元のサーファー。何か言葉を返そうと思ったのに、まごまごしている内に、見えなくなってしまいました。「また明日」・・たった5文字の言葉だが、そこには仲間意識があり、明日もサーフィンしようというメッセージがあった。ごく自然に、当たり前のように発せられたその言葉に暖かい人柄がにじみ出ていた。
今、日本のあらゆるサーフスポットで、マナーやルールを巡ってローカルとビジターが対立し、いろんな揉め事が日々起きている。悪質なマナーやルールを守らない一部のビジターのせいで、ローカルオンリーとなっているサーフスポットも多い。ちょっとした声かけなんて、ここでは当たり前なのかも知れないが、改めて徳島人の懐の深さを知った気がして、とても嬉しかった。全国のサーフスポットがこんな風になれればいいのにな。