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2拠点生活のススメ|第8回|初めて見た阿波踊りが、歴史を揺るがす阿波踊りだった件

徳島人にとって、阿波踊りとは

徳島と聞いて誰もが思い浮かべるのが阿波踊り、その歴史は400年以上。人口26万人の街に、全国から100万人以上が訪れるというのだから、その熱狂ぶりが嫌でも伝わってくる。飲み屋などで地元の方と世間話をしていても、阿波踊りの話になると目つきが変わり、一気に熱を帯びる。徳島人のDNAの中には阿波踊りが組み込まれているに違いない。

夏が近づいてくると家の前の河原で、毎晩太鼓や笛、踊りの練習が繰り広げられる。その熱を帯びた掛け声が家の中まで聞こえてきて、引っ越した当初はビックリしたものだ。市内の阿波踊り会館に行けば一年中踊りを見られるし、季節を問わず、市内で開催されるイベントでは、必ずどこかの連が阿波踊りを披露する。はなはる祭りという春のイベントで、初めて生阿波踊りを体験したのだが、深く開いた襟元、着物の裾からチラチラと見えるふくらはぎのなんと艶っぽいこと。

あの笠を身に纏うと、誰もがとびきりの美人に見える。なんてカッコイイんだろう。本番の阿波踊りとは、いかなるモノか、いやでも興味が高まっていったことを覚えている。

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祭りのクライマックス「総踊り」開催の危機!?

私が初めて祭りに参加した2018年は、阿波踊りに激震が走っていた。これまで阿波踊りを主催していた徳島市観光協会が赤字解消のめどが立たないと降板。徳島市を中心とした実行委員会が急遽祭りを仕切ることになったのだが、赤字の原因は、総踊りが行われる演舞場に観客が集中することで、他の3演舞場のチケット販売を低迷させているとして、6月に総踊り中止を発表したことに端を発する。

総踊りとは、全長約100メートルの演舞場に1,000人を超える踊り子が次々と踊り込む、祭りのクライマックス。

この総踊り中止の決定に、踊り手主体の「阿波おどり振興協会」が猛反発。「踊り手をないがしろにするな」と演舞場外の路上で独自に総踊りをする意向を示す。徳島市長は「危険だ」などとして4度文書で中止を要請。実施した場合に「ペナルティーも検討する」と述べるなど、異例の事態となり、この様子は連日ワイドショーで取り上げられ、全国ニュースにもなった。

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そうして迎えた2018年8月13日夜、やはり総踊りは決行されるとの噂を聞きつけ、私たちは地元の方々が足早に向かう方向に、訳も分からぬまま必死でついていった。歩行者天国となっている開催予定の路上には、すでに多くの人たちの姿が。本当に始まるんだろうか・・・固唾を呑んで待ち受ける観客。私たちの目の前では、中止を求める市の職員たちの説得が続き、その様子を何台ものテレビカメラが取り囲むといった状態。やがて「早く踊れ、市長は帰れ」など、観客の怒号が次々と飛び交い、緊張はMAXに。そんな中、いつの間にか浴衣や法被姿の踊り手たちもその場に勢揃いしていました。

「やるぞ〜」振興協会会長の声が響き、400人を超える鳴り物が路上になだれ込んできた。その大音量の迫力と一糸乱れぬ美しい演奏に圧倒される。鳴り物が路上の左右に分かれて配置につくと、女踊りの踊り子を先頭に、男踊り、女ハッピ踊りがパートごとに一団となって踊り込む。「待ってました!」沿道から大歓声が起こり、あっという間に会場は凄い熱気に包まれた。泣きながら踊る女性。見ている観客も涙している。こんな光景を目の前で見られるなんて・・・、今でもその感動は忘れられない。


阿波踊りネクストモデル

2020年、阿波踊りは新型コロナウィルスの影響で中止が決定。4日間全ての中止は戦後初めてらしい。この夏は、徳島人にとって、とても寂しい夏になった。

しかし、同年11月には、来年度の阿波おどり開催に向けて感染症対策のあり方などを検証する実証イベント「阿波おどりネクストモデル」が開催された。伝統を継承しながらも、途絶えること無く、安全に楽しめる阿波踊りとは何か。収容人数の制限や、接触感染アプリの導入周知、さらにはデジタルチケットの導入など、新たな試みも始まっている。2021年度の阿波踊りは、8月12日(木)~15日(日)と従来通りの日程で開催されることが発表されている。ぜひこの目でもう一度、あの感動を味わいたいものだ。

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