4月のヘルムートラング
一夜明けて、夜晒しにしていた洗濯物を取り込もうかと窓を見やる午前七時。
僕の一番好きなデザイナーについての与太話を書こうと思います。
今になって本人のデザインした服の人気が再燃しているアーカイブブームの筆頭、ヘルムートラング。
ブランド自体は1976年に出来てますね。
しかし全盛期と呼ばれるのはmid90's以降、出回るのも大抵96年以降の物です。
彼について回顧した文献は未だ無くて、初期の作品なんかはインターネットの海原をえっちらおっちらと探し回ってようやく少し、印象が掴める程度。
主にミリタリーウェアをサンプリングしてミニマル、乃至自分の良しとするムードにモディファイするといった点では一貫している印象を受けます。
わざわざこのブログに辿り着く程には物好きな読者諸賢です、この辺りが共通の認識ではないでしょうか。
さて。彼の美意識が、フールでデコラティブな当時のモードシーンに最も効率的に突き刺さった全盛期のアイテムが僕も好きな訳ですが、何故今これほどまでに彼のデザインに惹かれるのでしょう。
、、、というのを今回は文字に起こしてみようと思います。
最大の特徴は「シンプル」であること。ミニマルどうこう以前に先ずはシンプルです。
複雑でないこと。簡素な構造は勿論のこと、着用するにあたって文化的なコンテクストに自意識が邪魔されることがない。この服は誰の味方でもないんです。
衣服として必要以上に此方に干渉してこない。極めてニュートラルな服ですね。
印象やイメージには形がありません。
実体も無い。それなのにそれは時として重く重く背を埋めます。見えない足枷にもなりましょう。
しかし「〜っぽさ」を一切内包しないこの服は軽いんです。
印象の質量が軽い。
この点が非常に有難いんです。
ファッションは、モードは、常に時代に欲求を与え煽動することによって前進を続けてきましたね。今もそう。
しかし今は需要と供給のバランスが変わってきてます。よって前進の形がこれまでとは異質なものになり、「ファッションは成熟期を迎えた」だの「出尽くした」だのと叫ばれている訳です。
が、この話はまた別の頁で。
話を戻します。
今は需要を供給が大きく上回る情勢に加えて、情報が氾濫し海原に溢れ返る、そんな時代です。
共感を求め、迎合を誘い合い、みんながみんな声高に自己主張を叫ぶような。
僕にとってはそうした時代性へのカウンターアンサーとしてこの服はあるんです。
この服と同じ様に、自分は誰のものでもないという主張を二次的に込めている訳です。
ここまでだと「UNIQLOでよかろう」「無印も良いぞ」などなど、多方面から言われることでしょう。
決定的な違いは意匠です。
少し前に僕がCONTENA STOREで買ったヘルムートラングのシャツを例に挙げます。
グレイッシュなライトパープルのポリシャツ。
カラーパレットこそ独特ですが圧倒的にシンプルで無装飾です。
しかし襟裏にはカラーキーパーがデザインされていて、そのカラーキーパーの形はテーラードジャケットの上襟裏に施される「ヒゲ」の形をしてるんです。
普段決して見えることの無い部分に、あまりに静かでウィットに富んだアイデアですね。
このスポイトで水を落とすようなデザインは、その雫が少なくなればなるほどに濃密に、且つ透明度を増していく。
この手腕に心を掴まれた結果、こうしてアーカイブを集めてる訳ですね…。
さてさて。
そろそろ朝食を摂ります。
このブログでは僕が手掛ける色んな事柄を書いていくつもりです。
自分のブランド「DSOG」についてだったり、
古着屋「サントニブンノイチ」のオリジナルブランド「funfun」についてだったり、仲間とのゲリラポップアップストア「summer of love」についてだったり、今回みたいに好きな服についてだったり。
ご興味持っていただけたらインスタグラムにも遊びに来てください。
ではまた。
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