服を語りたい 3.
こんにちは。今日も面白い洋服をベタ褒めしていきます。
アライアのスカート。これで3枚目です。
先日紹介した2枚と比べてややフレアなシルエット。いわゆるトラぺラーズスカート(台形スカート)です。
マテリアルはフランスメイドのラムレザー。キャラメルブラウン。
ハイブランドに供給されていたフランスラムは本当に柔らかで極上の触り心地。
これはもう革と言うより肌なんですよね。
基本的にフランス製造のオールドタグ、と言うのが僕がこのブランドを蒐集する際の前提になっているのですが、アライアを象徴するいくつかの要素のうち僕の趣味にぶっ刺さるのがここまでのテキストでも紹介してきたロジカルカッティングエッジ。そしてそれに当たり負けしない強烈で確固たる美学。オールドタグ個体は一際この要素が強いように思います。
ヒップの円形を強調するダーツワークは前記事で触れた通りですが、このモデルではそれがより過剰な角度に。
そして何よりサイドのシームラインの取り方が秀逸すぎるんですよね。
腿の付け根のラインのトレース。アンダーウェアのラインのそれです。
人形とか分解するとき切り離すライン。
それを部分的に引用して癖取りに応用してます。
人体にもともと存在するラインを拾う事で、高い前衛性だけが一人歩きせず馴染んでくれるんですよね。
脚の存在がより前面に出てくるパンツではなくスカートでこれ拾うのは本当凄い。
あと人体にもともと存在するライン、って言うとデザインにおいて擦られまくってるはずなのに誰もやってないんですよ。脱構築におけるアイデアの発想と展開はマルタン・マルジェラに出し尽くされた、みたいな旨のテキストを以前見かけたことがありますが、それに同意するかしないかはさておき、レディースボディにおけるラインメイクはこの人が誰よりも深く開拓しているよな、と思うところです。
出尽くしてるかはさておきね。
そしてそのサイドシーム、裾上数センチのところ(ヒップが終わった辺り)でピョコっとフレアしてるんです。前の記事でも触れましたがこのレングスのコンパクトなスカートでもマーメイドラインの香りを混ぜ込んでくるんですよねこの人。
ヒップの膨らみまで、じゃなくってヒップの膨らみとその終わりまでをきちんとなぞってからのフレアなんですよ。キャンバスがどんなアイテムになろうと理想のヴィジョンの再現精度が狂気的。
そしてこれ凄くないですか。
フロントに直線のシームがあるのにわざわざ前述のサイドカーブシームにファスナーを隠してます。
これ何なんでしょうね。本当にわかんない。ただ難しい縫製になっただけでは?
ここで1日経過。
こんにちは。
で、自分なりに考えてみたんですよ。
結局確信のある答えは出ませんでしたが、まあこじつけ程度に書いていきます。
簡潔に言うとバイアス。
いやレザーに地の目なんかないやろ!って?
裏地です。
アライアの服は基本的にボディコンシャス。スキニーなところは本当にスキニー。
で、このスカートにおいて最もテンションがかかってしまうのがヒップライン。
しなやかで吸い付くような最高のラムレザーにはある程度伸縮性があるものの、裏地にはストレッチはないんです。これじゃ裏地がストレッチに置いていかれて被ダメージ待った無し。特にファスナー周りなんて致命傷になりかねません。
かといって裏地にストレッチ素材を使うと滑りが悪くなってスキニーウェアにとっては致命傷、本末転倒。
で、それならここのファスナーシームを斜めに入れて、ささやかながらバイアスの恩恵を奪い取ってやろう、と言うのが隠された意図ではないでしょうか。
まあ深読み的外れかもです。自信は15%くらい。
シンプルにファスナーは少しでも後ろに、見えない位置に置きたい、というだけかもしれません。
仮にこの論法で作られたとして、僕なら裏地全部を先ずバイアスで取ってファスナーはそのまま斜めに入れるかな。ファスナー縫合の時は正の目になって縫いやすくなるしストレッチもまあ利くでしょうし。
はい、素人の私見なんか入っちゃいましたが今回はこんなとこで。
お読みくださってありがとうございました。
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