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その顧客セグメンテーション無駄じゃないですか? ~顧客セグメンテーションで注意すべきこと~

マーケティング分析において顧客セグメンテーションはよくある分析手法の一つです。
しかし、セグメント分けが目的化し、無駄なセグメンテーションをしている現場も散見されます。
では、無駄なセグメンテーションを避けるためにはどうすれば良いでしょうか?

●●●が変わらないセグメント分けには意味がない

●●●に入る言葉、わかりましたでしょうか?

答えは「アクション(打ち手)」が変わらないセグメント分けには意味がない、です。

セグメントを分けても打つアクションが変わらないのであれば、セグメント分けはする意味がありません。
顧客を様々なセグメントに切って、セグメント別の施策を打つことや、セグメント別のKPI管理をすることは、事業数値の改善などの好影響を生む可能性があります。
しかし、無闇やたらにセグメントを切っても意味はありません。
セグメントが変わる =アクション(打ち手)が変わる、
という切り口が担保できているか?、を分析者は考える必要があります。
例えば、ECやオンラインのサービス、ゲームなどで、顧客を初期ユーザーと定着ユーザーと休眠ユーザーに分ける、といったことがよく行われます。
各セグメントごとに伸ばすべき数値は一般的に異なりますし、打ち手も変わります。

例えば、初期ユーザーはまず定着してもらうことが大事なので、F2転換率(初回購入した顧客が2回目の購入をした割合)をKPIとして様々な施策を打つことが多いでしょう。
例えば、2回目購入に使えるクーポンを配布したり、「XXXを使ってみませんか?」というPUSH通知をしたり、といったアクションです。

一方で、定着ユーザーの場合はどうでしょうか?
定着ユーザーの場合、単価向上を目指し、アップセルやクロスセルを促進することが常套手段です。
この場合は、例えば複数カテゴリーのあるECサイトであれば、特定のカテゴリーに使えるクーポンを配布したり、使えば使うほどお得になるようなポイント制度などを導入する、といったことが考えられます。

このように、セグメントを分けて考えるのであれば、セグメント別にアクションが変わるような切り口となっているか?を意識して分析しセグメント分けをする必要があります。

●●●がないセグメント分けには意味がない

観測性がないセグメント分けには意味がない、というのが二つ目の注意点です。

顧客をセグメントに分解しセグメント別の施策を実行するとき、日常のオペレーションの中で顧客を容易にセグメント分けできることが重要です。

やってしまいがちなのが、セグメンテーションの手法論から入ってしまい、運用を十分に考えていないケースです。

例えば次のようなケースです。
顧客セグメントの分解においては、k-meansなどを使って顧客クラスターを分析したとしましょう。
k-meansのセグメントごとに異なる傾向が見え、それに基づいた施策をやろうとしているとしましょう。
さて、実際に顧客クラスターごとに打ち手を実行しようとしたら、k-meansのクラスタリングに使用したユーザーの特徴量が現実にはあまり手に入らないことが判明しました。
また、特徴量に購買履歴を用いたため、初期ユーザーにはこのクラスタリングを適用できないことも判明しました。。。

このようにセグメント分けをする際には、実際に日常オペレーションの中でそのセグメントを観測することができるか?が非常に重要です。

ここをチェックしたうえで分析のHOWを検討しましょう。

補足:原則としてセグメンテーションはシンプルな方が良いが、分析時にはマイクロセグメントまで見るべき

セグメンテーションを複雑にすると、そのセグメンテーションに基づく打ち手の実行の難易度は基本的に上がります。

例えば、顧客を100セグメントに分けてメルマガ施策の出し分けをします、といったことをしようとしたらメルマガを100種類作らなければならないなど施策の工数やそのPDCAの工数も跳ね上がっていきます。
(このようなケースであればそもそもセグメンテーションではなく、機械学習等を用いてone to oneな手法の方向性に行くのがよいでしょう。)

あるいは、セグメントを細かく切って特定セグメントには刺さる施策を打つことができたものの、セグメントを細かく切り過ぎたため対象ユーザー数が少なく、ビジネスインパクトの総量が大きくならなかった、というのもよく見るパターンです。

つまり、セグメンテーションに基づく施策を行うのであれば、セグメンテーションはなるべくシンプルである程度大きな塊である方が良いわけです。

例えば、継続的に購入されるタイプのECサイト(例:日用品EC等)で初期ユーザー・定着ユーザーといった形で顧客分解する、というレベルのシンプルさです。
このくらいのシンプルさであれば、初期ユーザーを担当するチームと定着ユーザーを担当するチームに分けて比較的シンプルなKPI管理でマーケティングを運用することができます。
初期ユーザーを担当するチームはは新規購入者数や2回目購入転換率にフォーカスし、定着ユーザーを担当するチームは購入アイテム数などにフォーカスして施策を回していく、などです。
そして、それぞれのセグメントのサイズもそれなり大きくなるはずです。小さいところで大きな成果を出せたがビジネス全体には微風な効果しかなかった、も避けることができます。

しかし、これは「顧客を細分化して分析しなくていい」ということではありません。

むしろ、分析時にはマイクロセグメントと呼ばれるレベルで顧客を分解して分析することはとても重要です。

特にある程度事業が成長した段階においては、よくあるセグメント分け(新規 / 既存 / 休眠など)による分析はやり尽くされているケースも多く、その粒度で分析してもsomething newが得られないことも多いものです。

よって、顧客を非常に細かい粒度まで見て、どのような顧客が伸びているか?どのような顧客は伸びていないのか?を把握することは分析においては重要となります。

そのうえで、そのマイクロセグメントから得られた切り口から、そのセグメントをもっと大きく成長させられないか?
そのマイクロセグメントでうまくいっている事例をより大きなセグメントに展開できないか?という論点をもってインパクトの大きな示唆につなげていくなどの地道な分析も時には必要になります。

最終的な施策の実行を考えるとセグメント分けはシンプルな方が良いが、インサイトを得るためには顧客を細分化することも重要であることは留意しましょう。

今回は以上です。


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