データ分析によるインサイト導出のコツ
こんにちは、元コンサルタントで現在は事業会社でデータ分析組織のリードをしていますDAIです。
データ分析によるインサイト導出のコツというタイトルで書いたものの、実はデータ分析によってsomething newが見つかるケースというのは実はかなり少ないのが実務の現場です。
実は多くのデータ分析は、事業に向き合っている人からすると「やっぱりそうだったか」という結果に終わることは非常に多いです。
人間の感覚というのはなかなか馬鹿にできません。
分析を10回行ったら、2-3回でも何らかのsomething newなインサイトを提示し、ビジネス成果につなげることができたらばかなり優秀なデータアナリストと言えるでしょう。
そもそもデータ分析に新しい発見を求めるのは、期待値が高すぎるのです。
とは言ってもデータ分析において新たな発見を求められるケースもないわけではないので、ここではいくつかのTipsを紹介したいと思います。
Tips 1 : 現場の人の常識をくつがえす仮説を持って分析する
このTipsに近しい事例が、ホテル・レストラン予約サイトの一休株式会社の榊氏の著書「DATA is BOSS 収益が上がり続けるデータドリブン経営入門」で紹介されています。
本書の中で、一休の事業が伸び悩んでいた時期に、その原因は「市場が伸びていないから」という説が社内で強かったそうです。
しかし、この仮説は間違っているのではないか?という目線で、一休が主戦場としている高級宿のインターネット予約の市場成長を分析したところ次のようなことがわかったそうです。
高級宿のインターネット化は進展している
一方で、一休の高級宿における販売シェアは低水準で推移している
・・・
本稿の冒頭に書いた通り、実際には現場の人の勘と経験は意外と馬鹿にできず、現実の問題の本質をしっかりと見抜いていることも多いものです。
しかし、先ほどの一休の例のように「本当にそうなのか?」と現場や有識者の間でもっともらしく言われていることを疑い、その仮説を反証できたとき、分析によって大きな価値が生まれてきます。
Tips 2 : 今まで見たことがない粒度で見る
分析で価値を出していくためには、やはり今まで関係者が見てこなかった粒度で分析するなど、地道な努力も必要です。
例えば、自社顧客の中で注力すべき顧客をターゲティングする場合、様々な切り口で顧客をセグメンテーションすると思います。
よくある切り口は、ある期間の利用金額などでHigh / Middle / Lowのように分類するやり方でしょう。
しかし、経験則的にはよくある切り口からはあまり新しい発見は出ないものです。
そこで、より細かくセグメントを刻むこと(マイクロセグメント化する)がポイントになってきます。
マイクロセグメントの成長率や継続率などの指標を観察していくことで、自分たちがどのような顧客に支持されているのか、あるいは支持されいないのか?を解像度高く把握することができます。
このような地道で細かい分析は、自分たちも気づいていなかった自社の強みや弱点に気づくきっかけになるでしょう。
コラム:マイクロセグメントのデメリット
細かく自社顧客をセグメントするような手法のデメリットは大きく2つあります。
一つは、地道な分析となるので時間と労力・根気が必要なことです。
分析の切り口は無限にあるので、どのように切るか?などの試行錯誤や、セグメント別の各種指標の可視化や観察に多くの時間を要します。
もう一つは、セグメントなどを細かく切ると一般的にはその対象から得られるビジネスインパクトが小さくなってしまう問題です。
例えば、年間の利用金額をHigh/Middle/Lowではなく20段階に分解したとします。この中から、伸びているセグメントがあったとしても、それは全体の3%程度のユーザー数しかなく、売上シェアも5%程度しかない、といったことが起きがちです。
Tips 3 : この分析で行動が変わるのか?を自問自答する
そもそも分析とは何のためにやるのでしょうか?
ビジネス上の行動を変えるためです。
なので、分析者は常に「この分析結果が出たら、ビジネス上の行動は変わるのか?」ということ自問自答し続けなければなりません。
逆に言えば、どういう分析結果が出れば行動が変わるのか?を考えて分析する必要があります。
(これは、一歩間違えると"見たいものを見たいように見てしまう"というリスクがあるので、そのようにならないように注意が必要です。)
例えば、顧客の継続率を可視化してくれ、と頼まれたとしましょう。
もちろん言われた通りに可視化するだけでもいいのですが、「どのような顧客層で継続率がどのように変化しているか?」あるいは「継続率が下がるタイミングはどこか?」といった問いを持って臨めば、継続率の分析によってビジネスアクションが変わっていく可能性が出てきます。
例えば、特定のタイミングで顧客が離脱するのであれば、そのタイミングのUXを改善したり、クーポン等のインセンティブで繋ぎ止める、などが考えられます。
あるいは、根本的なサービス品質の課題などがあるかもしれません。
どうすればアクションが変わるのか?を意識した分析は、有益は示唆を得られることが多いように思います。
簡単ですが、分析による新発見をするためのTipsを紹介しました。
少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。