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心理的要因と免疫反応がアレルギー症状に与える影響

現代医療において、心理学と免疫学はしばしば別個の専門領域として扱われがちであり、これが統合的アプローチの発展を妨げています。この点において、アレルギー症状に限らず様々な慢性症状を根治的に改善させるためには、心と身体が切り離せないように、様々な事柄を「関係性」を通じて考えることが大切で、その「関係性」が慢性症状の根治への鍵になるのではないかと考えています。

アレルギー症状における心理的要因と免疫的要因の影響を理解するためには、その基本メカニズムの理解が不可欠です。アレルギー反応は、本来無害な外来物質(アレルゲン)に対して免疫系が過剰反応することで起こります。この過程で、免疫グロブリンE(IgE)抗体が重要な役割を果たします。IgE抗体はアレルゲンに特異的に結合し、その後マスト細胞(アレルギー反応に関与する免疫細胞の一種)や好塩基球といった細胞に結合します。アレルゲンが再び体内に入ると、IgE抗体がアレルゲンを捕捉し、マスト細胞や好塩基球からヒスタミンやその他の炎症性化学物質が放出され、アレルギー症状(くしゃみ、鼻水、かゆみ、発疹など)が引き起こされます。

心理的ストレスは、このアレルギー反応のメカニズムに直接および間接的に影響を及ぼします。心理的ストレスの影響は、セリエのストレス学説から始まり、現代では胃腸症状に限らず、腰痛や関節痛などの筋骨格系の症状にも影響を及ぼすことが当たり前のように語られるようになってきました。

ストレスに遭遇すると、身体は即座に「戦うか逃げるか」の反応を起動し、ストレスホルモンであるコルチゾールやアドレナリンが放出されます。これらのホルモンは、一時的に免疫系の反応を高めることができる一方で、長期的なストレスの状態では免疫系を抑制し、そのバランスを乱すことがあります。

具体的には、ストレスホルモンの増加は、免疫系の中でも特にアレルギー反応に関わるマスト細胞や好塩基球などの細胞の活性化を促します。これらの細胞は、アレルゲン(アレルギー反応を引き起こす物質)に対する体の過敏反応を引き起こす役割を担っています。活性化されたマスト細胞からはヒスタミンをはじめとする炎症性の化学物質が放出され、これがアレルギー症状(くしゃみ、鼻水、かゆみ、発疹など)の原因となります。

さらに、ストレスは免疫系の調節機能に影響を及ぼし、アレルゲンに対する過敏反応を増大させることがあります。例えば、ストレスが長期化すると、免疫系がアレルゲンを「敵」と認識しやすくなり、免疫グロブリンE(IgE)抗体の生産を促進することが知られています。IgE抗体はアレルゲンと結合し、マスト細胞や好塩基球を活性化させるため、このプロセスの促進はアレルギー症状の悪化を引き起こします。

このように、ストレスは免疫系に複数の経路を介して作用し、アレルギー反応を引き起こすか、既存のアレルギー症状を悪化させる可能性があります。したがって、ストレス管理はアレルギー症状の予防および管理において重要な役割を果たします。

例えば、オハイオ州立大学の研究(Janice Kiecolt-Glaser 2008)によれば、ストレスがアレルギー反応を即時に悪化させるだけでなく、翌日に遅延相反応として反応がさらに重症化することが明らかにされました。この反応は、アレルゲンに対する体の反応が持続し、強化されることを示しており、以前に反応を示さなかった刺激に対しても強い反応を示す可能性があることを意味します。これらの結果は、ストレスが免疫系のアレルゲンに対する反応に重要な影響を与えることを示し、アレルギー反応の治療と管理において、ストレス管理が重要な要素であることを示唆しています。

免疫系は、身体を病原体から守るために重要な役割を果たしますが、アレルギーの場合は誤って無害な物質に反応してしまいます。この過敏反応は遺伝的要因、環境要因、心理的要因および早期のアレルゲン曝露などによって左右されます。例えば、特定の食品や花粉に早期に曝露することで、免疫系がそれらの物質に対して耐性を発達させることがあります(早期暴露説)。一方で、過度に清潔な環境で育つと、免疫系が様々な抗原に対して十分に「訓練」されず、アレルギー反応を引き起こしやすくなることがあります(衛生仮説)。

心理的要因と免疫反応は相互に影響を及ぼし合います。例えば、ストレスが免疫反応を変化させることでアレルギー症状を悪化させる可能性がありますし、アレルギー症状がストレスや不安を引き起こすこともあります。このように、アレルギーの治療には、対症療法的な薬物療法だけでなく、根治療法を狙った心身相関的アプローチが必要です。心理的要因と免疫的要因の相互作用を理解することは、アレルギー症状のより良い管理と治療につながります。

心身相関的アプローチの一例である心身条件反射療法(PCRT)は、アレルギー症状が誤学習による条件付けであるという考えに基づいています。このアプローチは、無意識の心の信号がアレルギー反応に影響を与えていると考え、これを調整することで症状を根本から改善を目指します。PCRTによる長年の臨床研究、実績に基づくアレルギー症状の仮説を花粉症の事例で説明します。ある花粉症の患者は、PCRTの検査では、過去の悲しい記憶と花粉症の症状が関連していることが明らかになりました。治療では、この記憶と症状の関連を断ち切る調整で、患者の症状が著しく改善されました。

この改善例の理論的背景を解説します。まず、5年ほど前にお母様を亡くした際、悲しみが絡んだストレス刺激で、免疫系が刺激され、マスト細胞の活性化やIgE抗体が増加していた状態になり、アレルゲンへの過敏反応が強くなっていたことが推測できます。そこに、花粉のアレルゲンが体内に入って、花粉症のアレルギー症状が発症した可能性があります。その後、そのメカニズムは条件付け、すなわち、脳に学習記憶されて、毎回、花粉のアレルゲンを吸入する毎にアレルギー症状が再現されて、花粉症の症状を毎年繰り返していたという仮説が成り立ちます。また、人は悲しくなると、涙や鼻水が自然に出てきますが、そのような悲しみのメカニズムも花粉のアレルゲンでスイッチが入り、心の表層的な悲しみは解放されていても、身体に記憶された深層的な悲しみは身体の作用として再現されるということも仮説として考えられます。

これは、一つの事例の仮説的解説ですが、このように様々な心理的要因が免疫的要因と関連し合い、それらの信号の混線が条件付け、すなわち誤作動記憶として脳や身体に記憶化、プログラム化されてアレルギー症状を繰り返していることが考えられます。このような心身相関的アプローチ、例えば心身条件反射療法(PCRT)は、無意識の心の信号がアレルギー反応にどのように影響を与えるかを理解し、これを調整することで症状を根本から改善を目指します。このようなアプローチは、アレルギー症状を持続的に改善させる可能性を秘めており、心と身体の相互作用を重視しつつある現代医療の重要な方向性を示しています。

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