心の「二面性」がもたらす健康への影響
先日、ある患者さんの症状に関係する誤作動記憶の検査で、「心の二面性」に関連する内容がありました。これは他の患者さんにも共通して見られるものなので、ご紹介いたします。具体的な症状の内容やアプローチの説明は省略し、どのような信念体系が誤作動に関係していたかという観点でお伝えします。症状の因果関係として、Aさんの症状は、先輩であるBさんが久しぶりに遠方から帰省されたことに関係していました。
AさんとBさんは思春期からの友人で、先輩後輩という上下関係もあり、兄弟のように非常に親しい間柄でした。Bさんが遠方に引っ越してから約20年ほど経ちましたが、帰省するたびに年に数回会っているとのことです。表面上は、会うのが嬉しく、嫌な気持ちはまったくないと感じていました。しかし、PCRTの検査では、Bさんと会うことをイメージすると、無意識的に身体が微妙に緊張し、陽性反応が示されました。
その誤作動記憶を紐解いていくと、AさんはBさんが人前で自分との関係性を好意的に語ってくれることに好感を持ち、そこから快感を得ていました。しかし、深く考察すると、Bさんといるといつも振り回されていると感じる自分がいました。時間にはルーズであり、Bさんの趣味に付き合わされることで犠牲感もありました。そして、客観的に自分の心を観察すると、Bさんを空港で見送った後はいつもほっとしている自分、何かから解放された自分がいることに気づきました。
このように、表層の意識ではBさんに会うことを嬉しく思う一方で、深層の無意識では嫌気がさしている自分もいるという意識と無意識の葛藤が隠れていました。その結果、正常な神経機能の信号に、意識と無意識の葛藤が混線を生じさせ、体調不良を引き起こしていたことが分かり、施術後にはその症状が改善されました。
このような意識と無意識の不一致や葛藤で生じる誤作動が、様々な症状に関連しており、一般医療では分からない隠れた原因になっていること、心の影響がタブー視されていることは、PCRTの臨床現場ではよくある事例です。このような心の葛藤による誤作動を予防するためには、人の心には二面性、双極性があるという性質を理解することが大切です。
心の二面性、双極性といわれる相反する心の動きは一般的にも知られていますが、いざ自分の日常生活になると、このような心の二面性は分かりにくいものです。また、二重人格は良くないという風潮があるため、一つの人格であろうとする作用が働きます。しかし、人の心の本質は多重人格であるのが自然であり、様々な事柄に対して相反する感情や考えを持つことがあるのが本来の心の在り方なのです。別の言い方をすると、「建前」と「本音」があるということです。
社会生活において「建前」と「本音」を上手に使い分けて、人間関係を良好に保とうとしているのは誰もが経験しているのではないでしょうか。しかし、今思っていることが「本音」なのか「建前」なのか分からなくなることも少なくありません。本音と建前を意識的に使い分けてそれを自覚している時は、意識と無意識の心の不調和が生じにくいのですが、建前の内容をあたかも本音であるかのように混同してしまってモヤモヤする際には、意識と無意識の心の不調和が生じて体調不良を引き起こしてしまいます。
例えば、分かりやすい例で言うと恋愛感情です。「私は彼のことを愛しているだろうか?」「彼は私のことを愛しているのだろうか?」などの問いは恋愛関係にはつきものです。このように心の状態を白か黒かの二項対立で選ぶというのは非常に不自然なことです。恋愛に限らず、家族や友人との関係で深い愛情を感じながらも、些細なことで怒りを覚えることがあります。また、恋愛当初はあんなに愛し合っていたのに、時間と共に憎しみ合うというのはよく聞く話です。
ドラマで「本当に私のことを愛しているの?」、相手は「・・・」無言か、「こんなに愛しているのに君は分かってくれないのか・・・」などと嘘っぽく語るかもしれません。しかし、その人の本音は理性で語る言葉よりも、その人が示す行動や仕草が示しており、無意識の心の表れでもあります。人は肯定的な言葉を信じたい傾向がありますが、その肯定的な言葉の裏を直感的に感じてモヤモヤすることも少なくありません。
このように、心の二面性や双極性が体調不良や精神的な不調に影響を及ぼすことがあります。そのため、自己の意識と無意識の動きを理解し、調和させることが重要です。自己の心の動きを深く理解し、その二面性を受け入れることで、心身のバランスを取り戻し、健康を維持することが可能です。心の葛藤が体調にどのように影響を与えるかを認識し、その解決を図ることが、より良い生活を送る鍵となります。
心の二面性を受け入れるということは、ポジティブとネガティブな心の両面を共存させること、建前と本音を共存させることです。ネガティブな心を排除して白黒に分けることではありません。白と黒の両方を上手に受け入れて、上手に意識と無意識の心を運転することが大切です。
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