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【ほししいたけファンインタビュー】三光院 「竹之御所流精進料理」後継者 西井香春さん

1)ほししいたけ、あなたの推しポイントは?

 日々、精進料理を作っていると、ほししいたけというのは欠かせない食材です。お肉やお魚の代わりになる食材として使いうことも多いです。
 あとは、お料理の味を深める時でしょうか。深い味を出したい時には、他の野菜を考えてみても、ほししいたけのほかには思いつかないわね。うちではちょっと味が足りないなという時には、しいたけだったり、もどし汁だったりを足すようにしています。

 色も重要です。料理を作る際は五色を使った方が良いといわれているけれど、黒い色ってしいたけや海苔のほかにあまりないの。
赤、黄、青(緑)、白、黒で五色。黒が入らないとお料理が引き締まらないし、さらに黒には料理の格調を高める働きもあるんですよ。そういった意味でも、しいたけは欠かせない食材です。

料理の格が上がる!?ほししいたけの「黒」い色

2)ほししいたけとの出会いはいつ?どんなふうに?

 精進料理に携わるずっと前、小さい頃から食べていました。我が家のちらし寿司は、お魚などはのせない精進風だったので、ほししいたけが必ず入っていました。

 16歳の時にフランスに渡ってしばらく生活していたのですが、その当時、1960年代はパリでも日本の食材なんてほとんどなくて、お醤油すら手に入らない時代。今と違ってフランス料理しか食べられないから、やはり日本食が恋しくなるんです。そんな時、何が一番重宝したかというと、乾物。私宛のパリ行きの荷物には必ずほししいたけなど乾物を入れてもらっていました。

 そうそう、当時パリから160キロほど南の方に週末しか行かない別荘があって、そこに泥棒が入ったことがあったんです。ある日、行ってみると居間にコップなどが転がっていて、「あら?おかしいわ」と家の中を見てみたら洗面所の鏡がない、天井の電球もない。ガスがつかないと思ったらプロパンガスもない。家中の物が全部盗られていたんです。私は、泥棒の中に女性がいたんじゃないかと想像しているんだけど、台所の食品もね、干瓢、ひじき、ほししいたけなどもぜーんぶ持って行かれちゃった。でも日本の乾物なんてフランスの泥棒が使い方を知ってるわけないでしょ?きっと、干瓢はパスタ、ひじきは紅茶と間違えたんじゃないかと皆で大笑いしたんですよ。ほししいたけだけは、向こうにも乾燥キノコがあるから、「美味しいキノコが見つかった」って喜んだんじゃないかしら(笑)

3)西井さんは普段何をしている人ですか?

 16歳で親戚が住んでいたフランスに行き、現地でフランス家庭料理と製菓を学びました。帰国後は、六本木で料理教室やワイン会などのサロン「ポ・ト・フー」を主宰していました。本名の「西井郁(あや)」の名前でレシピ本を出版したり、料理番組にも出ていたんですよ。
 転機は1993年、武蔵小金井の尼寺・三光院のご住職・星野香栄禅尼との出会いです。日本料理の原点を究めたいと考えていた私は、三光院でご住職の心のこもった精進料理に心をつかまれ、そのまま弟子入りしました。以来、ご住職の元で京都の門跡寺院の流れを汲む「竹之御所流精進料理」を学び続け、現在は後継者として、三光院で季節のお食事をお出ししたり、お料理教室で教えたりしています。他所とは違う、三光院の精進料理をもっと多くの皆様にお伝えしたいと日々努めています。

三光院では「竹之御所流精進料理」をコースでいただける

4)みなさんにどんなふうにほししいたけを楽しんで欲しいですか

 私は年中使っていますからねえ(笑)。
 ほししいたけに親しみのない方にまず試していただきたいのは「焼きしいたけ」。戻して軸を取ったほししいたけを、ただフライパンで焼いてお醤油を回しかけるだけ。このシンプルな食べ方がいかに美味しいか!もう、他がいらなくなっちゃうくらい美味しいんですから。
 油はあってもなくても良いんだけど、今の方にはちょっと油をひいた方が美味しいかもしれませんね。それからキノコ類はどれもそうだと思うんだけど、強火でしっかり押さえつけながら焼くことが大切です。
 そこから始めていただけると、しいたけの素晴らしさが一番わかるんじゃないかしらね。

「焼きしいたけ」は、フライパンに押しつけて水分を飛ばすように焼きつけるのがコツ

 そして先ほども話しましたが、ほししいたけは乾物としての保存性のよさもポイントです。災害の時にも頼れる食品ですから、他の乾物と同様に常備されると良いと思いますよ。


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