第11章 ストレス解消の幅を広げよう
まだまだストレスが溜まっている人に
マインドフルに食べ、日常生活をマインドフルに過ごし、コミュニケーションにも注意を払ってもまだまだ疲れている、ストレスが溜まっているという人もいると思います。それほどストレスが溜まっているということは普段の生活がかなりハードで、身を削るように過ごされているのでしょう。最近はプロスポーツ選手も、ただがむしゃらに鍛えるのではなく、体のケアを大事にすることが増えてきました。誰しも自分の体と心を使って生活しているという意味では「プロ」ですので、たった一つしかない自分の体と心をケアする力を身に着けていきましょう。ここで紹介する方法は、先程のダムの例えでいけば、溜まった水を放水する力を上げていくようなものです。
マインドフルリラクゼーション
まず最初に一つ、マインドフルにリラクゼーションする方法をお伝えします。緊張している状態で、「緊張しないで、リラックスして」と言われて、リラックスできるのなら苦労はしません。リラックスしようと頑張るほど、余計に力が入って、緊張が強まるものです。むしろ、逆に思いっきり力んで、力を入れ続けると、ずっと力を入れ続けることはできないので自然に力が抜けていきます。これは筋弛緩法と呼ばれています。これをマインドフルに一緒に身に着けていきましょう。マインドレスに生活していると、多くの場合、だんだんと前のめりにになって、肩が上がり、猫背になって、姿勢が悪くなります。疲れや肩こり、腰痛が出てきて、それをかばう様にますます姿勢が悪くなる悪循環になりがちです。そのため、ここでは肩や背中に注目してマインドフルなリラクゼーションをしていきましょう。
☆肩
① 両腕をまっすぐ下ろします。 指先にじんわりと血が貯まっていく感覚があるかもしれません。
② 両肩を5-10秒程度ぎゅーと上にあげて、 肩や肩甲骨周りの筋肉のハリや緊張を感じます。
③ 力を抜いてすとーんと下におろします。おろした反動で肩周りの筋肉の緊張が緩むのを味わいます。
☆背中
① 掌を握り、腕は折りたたんで肩に近づけます。
② ぐーっと腕を外に広げて、胸を張って、肩甲骨を背骨の中心に引きつけます。
③ ふっと一気に力を抜きます。同じ姿勢で固まっていた筋肉がじんわりと伸びる感覚を味わいます。
リラクゼーションの選択肢を広げよう
自分をケアしてストレスを解消する方法は種類が多い程、色んな場面で使えるのでリラックスしやすくなります。自分なりのリラクゼーションの方法を開発してみましょう。いきなり新しい趣味を開発するのも良いですが、時間がなかったり、お金がかかったりして挫折しやすいので、まずは日常生活の延長線上で選択肢を広げていきましょう。日常生活は私達の五感をベースに成り立っているので、自分の好きな感覚や得意な感覚から伸ばしていくと良いです。私が心がけているところを紹介していくので、それを参考にしてみて下さい。
味覚
すでに紹介させて頂いたので、皆さんの食べ方ももう変わってきているかもしれません。これまで紹介していない大事なコツとして、慣れをずらすことが挙げられます。いつもと同じルーティンでは、予想と実際のギャップが少ないので、マインドフルに食べる難易度があがります。いつもと同じメニューではなく、違うものを食べてみたり、新しいお店に入ってみたり、いつもと違う味付けにしてみたりと、ギャップを作ってみましょう。
一人焼肉、一人ラーメン、一人居酒屋なども他人と話さない分、食事自体に集中しやすいです。一人焼き肉であれば、肉を飲み込んだ後に口に残る味わいの余韻まで楽しむことができます。
自販機の飲み物も、いつもあまりに決まったものを買っているようであれば、5秒で良いので、上から下まで眺めてみて、興味深いものがないか探してみて下さい。選んだ新しい飲み物が好みではなかったら残念ですが、その分当たった時の嬉しさもあります。以前の私は、水は水道水で無料で飲めるから買う必要はないと思い、ミネラルウォーターは買わないようにしていたのですが、そんなマイルールを外して一度飲んでみると、水道水では味わえない水の美味しさに気付き、よく買うようになりました。それまでは味がつけられている飲み物を必ず買うようにしていましたが、余計なカロリーを取っていたなと思いますし、ただ喉が渇いている時は味がついてない飲み物のほうがむしろ喉が渇かなくなるので、ダイエットには効果的でした。
新型コロナウイルス感染症によって流行ったオンライン飲み会も、大勢でなく気心知れた数人とするのなら、自分のペースで食べたいもの、飲みたいものを口にできるので、ストレス解消には向いています。ただ、断りきれず飲み会の回数が多くなったり、終わり時が分からなくなって、生活リズムが崩れないようにしましょう。
聴覚
聴くことが好きな人はこの分野を広げてみましょう。今まで聴いたことのないジャンルの音楽を聞いてみたり、今まで聞いていた曲も、楽器の音や、歌手の息遣いなどに注目して丁寧に聞いたりしてみると新しい発見があります。プロの曲だけでなく、今はアマチュアの人が色々な音楽をネットにアップしてますので、聴き比べるのも楽しいかもしれません。
自然の音もストレス解消には役立ちます。ネットで検索して聴くのも良いですが、普段の生活に注意を向けてみると、近くの小さな川の音や、雨の日の水滴の音、風の音、朝の鳥の声、虫やカエル達の声など、身近にあっても普段は意識してない音がたくさんあります。頭の中を忙しくせず、その様な音にただじっと耳を傾けることも気持ちを落ち着かせるでしょう。
嗅覚
普段の生活だと、臭い不快な匂いは、危険を察知するための標識として目立って感じられることが多いのですが、心地よい香りに対してはあまり意識していないかもしれません。花や香水、アロマ、お香、匂い袋、ハーブ、芳香剤など多種多様な香りを楽しむ商品があるので試してみるのも良いと思います。ただ、新しく時間とお金をかけて何かを始めるのはハードルが高いので、コーヒーや紅茶などの飲み物や食べ物などの普段出会う匂いを意識的に味わう方が簡単でしょう(尚、カフェインの入っていないルイボスティーや蕎麦茶の方がリラックスしやすく、睡眠の質にも影響しないので特に夕方以降はおススメです)。匂いという目線で生活を見直してみると、夕立の時の土の匂いや、雨の匂い、帰り道の草花の匂いなど、普段意識していなくても、意外と匂いと触れ合っていたことに気づくこともあります。
視覚
目からの情報は幅が広いので、広げがいがありますが、現代社会は視覚情報に溢れていて、これ以上広げると疲れてしまう可能性もあるので、注意が必要です。ただ、視覚はマインドフルに集中しやすい感覚ではあるので、場合によっては広げてみてもよいかもしれません。好きな動物の動画を見たり、童心に帰ってシンプルなア●パンマンのアニメを見たり、漫画を見てみたりしてもいいですし、普段の生活で見落としがちな、帰り道に咲く花や、夜空の月を少し眺めてホッとしてみたり、ぼーっと雲の流れをみて頭を空っぽにするのもよいでしょう。
触覚・温度覚
自分の体に触れているもの・自分の体を使うものは、全て活用できる可能性があります。肌に心地よい服を身に着けたり、庭の手入れをしたり、入浴剤を使ってみたり、ウォーキングをしたり、体を動かしてみて、感じてみましょう。「運動をすると気持ちいい」「人と話すと楽しい」など、自分が心地よくなることに触れると、そこから元気をもらい、また何かしてみようというエネルギーも得ることができます。平日は街中で仕事など理性的な活動をしている方は、休日は郊外で、より動物的な、自然に触れる活動をしてみると癒されるかもしれません。