大学病院の精神科医がこっそり教えるたった3つの快眠のコツ
ストレスを貯めない睡眠術
ストレスを溜めないためには睡眠も大切ですし、短時間睡眠は体重増加と相関があるので、ダイエットの観点からも重要です。エジソンが電球を開発したことで、人類は豊かになりましたが、夜に明るくなってしまったため活動時間が増えてしまい、睡眠や休息の時間が減ったことを「エジソンの呪い」と呼びます。そんな現代社会でうまく寝るためにはコツが必要ですので、紹介したいと思います。
原則一. 遅寝・早起き。眠たくなったら寝る
睡眠をしっかり取ろうとすると、多くの場合、早寝早起きになることが多いのですが、これが落とし穴になることがあります。眠くないのにベッドに入ると、寝付くまで時間がかかります。そうすると、「明日は仕事が終わるか不安だな…」「今日はなんであんな失敗をしてしまったんだろう」などと未来の不安なことや、過去の後悔について考え始めて、不安や緊張感が強まります。古来から人間は、動物に襲われるなど危険な目に合わないように、不安や緊張感があると睡眠が浅くなるようになっているのです。そして、寝付きが悪くて苦しんでいると、「今日はちゃんと寝れないんじゃないか…」「眠れないと明日頭がぼーっとして仕事に差し障るから、早く寝ないといけないのに…」と考え始め、眠らないといけないというプレッシャーで余計に緊張し、ますます眠れなくなっていく悪循環に陥ります。
そのため、眠くなるまでベッドには入らず、夜は自分なりのリラックス方法でのんびりと過ごし、眠くて眠くてベッドに入ったらすぐに寝てしまいそうと思うまで、寝る力を貯めるのが一番のコツです。このように寝る力を貯めて睡眠時間を圧縮すると、その分睡眠が深くなり、質の高い睡眠が得られます。
この話をすると、「眠くなるまで起きていると朝になってしまいます」という方もいますが、それはそれで良いのです。寝れなくて朝になっても、朝寝はせずに、起きてしまいましょう。その日はだるくてしょうがないと思いますが、昼間に眠らずに夜を迎えれば、2日分寝る力が溜まっているので、寝れなかった次の日には眠れます。その様に過ごしていくと、睡眠のリズムが自然と整っていき、夜に眠くなって、朝起きる、質の高い睡眠が得られます。睡眠時間にこだわったり、毎日ちゃんと寝ようとするとそれがプレッシャーになり、理想として目指している睡眠からはますます遠ざかります。皆さんも授業で経験されてきたように、「起きていなさい」と言われると逆に授業中に寝てしまうように、「ちゃんと寝よう」と思うと、逆に寝にくくなっていくのです。睡眠時間は6時間が良いとか8時間が良いとか色々な情報が出回っていますが、それはあくまでデータや研究の話であって、人間はロボットではないので、「今日は8時間寝よう」と決めても、その通りにはならず、その様な決まりはプレッシャーとなり、睡眠の質を下げます。睡眠時間にとらわれず、眠い時に寝るという感覚を重視した睡眠をおすすめします。
また、眠いのになぜか寝付きにくい時などは、横になりながら以前紹介したマインドフルネス呼吸瞑想をしてみるのもよいでしょう。将来の不安や、過去の後悔ではなく、今この瞬間のベッドで横になっている心地よさに注意を向けていくことで、自然な眠りに誘われていきます。
原則二. 起床時間は一定に。昼寝は15時より前で30分以内
眠くなるまで起きて、寝る時間は決めない様にするのとセットでやって頂きたいのが、「朝は7時に起きる」など起床時間は一定にすることです。これをしないと、ずるずると昼夜逆転していきます。加えて、昼寝をしすぎないことも大切で、するとしても15時より前に30分以内にしましょう。1-2時間も寝てしまうと、せっかく貯めていた寝る力が失われ、夜にまた眠気がこなくなります。
眠れなかった翌日は、パフォーマンスが下がっていて、思う通りできなくてヤキモキしてしまうかもしれません。しかしそもそも人間は機械ではないので、一定のパフォーマンスを出し続けることは出来なくて当然なのです。プロのスポーツ選手は数値で出てくるのでわかりやすいですが、常に毎回同じパフォーマンスを出せる人はいません。それを無理をして毎日パフォーマンスを下げないために毎日しっかり寝なきゃいけないと思うと、余計に寝れず、逆にパフォーマンスが下がってしまいます。パフォーマンスが下がってしまうことを自然なこととして、悪い時は悪いなりに、自分のやれる範囲でこなしていくことが、仕事や学業、家事育児などあらゆることを長く続けるコツで、良い睡眠にも繋がります。
原則三. 18時頃から心身の緊張を緩めてベットへの着陸準備を
飛行機が急には着陸できないように、人間の脳も急に眠れる状態にはなりません。飛行機が目的地に向けて徐々に高度を下げていくのと同じように、18時を過ぎたら、心身の緊張を緩めて、眠くなってベットに入っていく状態をつくっていくことが大切です。そのためにもこれまで紹介してきたリラクゼーションをしてみたり、18時以降はカフェインを控えたり、就寝予定の2時間前頃にぬるめの温度で入浴をして、緊張を緩めて行きましょう。アルコールは入眠を促しますが、睡眠の質を下げるので、寝酒は睡眠にはよくありません。また、仕事などの緊張を伴う作業は睡眠の妨げになるので、18時以降はなるべく避けて、日中にするなどメリハリをつけると良いでしょう。毎日のように残業して、夜の0時に帰宅するような仕事をしすぎている人が不眠になっていることが多いのですが、夜遅くまで仕事で緊張しているのに、家に帰ったらすぐに切り替えて寝ようというのは本来、人間には離れ業です。脳はそんなに器用ではないのです。定時で帰宅し、自宅でしっかりと脳をクールダウンさせて入眠準備をするのが理想的です。私は産業医もしているため、その様な人間的な働き方を許容しない職場がたくさんあることも知っていますが、その様な職場ほど、身と心を削って会社に尽くす社員が体調を崩すと感謝するどころか、あっさりと切り捨てることがあります。自分の心と体にマインドフルになり、健康を維持するために今の仕事の状況がふさわしいかを見定めてみて下さい。