【医師解説】慢性創傷に対する間葉系幹細胞の効果
慢性あるいは非治癒性潰瘍は通常の創傷治癒機作が作用出来ないことにより生じます。
糖尿病性皮膚潰瘍、壊疽患者は神経障害末梢血管障害、局所の高血糖状態など様々な創傷治癒阻害因子により慢性創傷となった治療方法としては抗菌、血管再生、組織の再構築などを目的として外科的治療や化学療法など多数の治療方法がありますが、慢性創傷を治癒させる特効薬はありません。
しかし、糖尿病動物モデルを用いて、 間葉系幹細胞の傍分泌による種々成長因子により血管新生や組織の再生を促進させたとの報告があります。
間葉系幹細胞を糖尿病性下肢部潰瘍患者に投与により循環障害が軽微になったとの報告があります。
寝たきりの患者は床ずれが起き皮膚や皮膚下組織が圧迫壊死します。
この褥瘡部位に間葉系幹細胞を投与することにより、血管内皮細胞、表皮細胞の再生により治癒することが、脊髄損傷あるいは視神経脊髄炎患者で報告されています。
間葉系幹細胞を皮膚下に注入することにより、熱傷後やニキビ跡の瘢痕が消失したとの報告もあります。
この瘢痕治癒は、間葉系幹細胞から分泌された肝細胞増殖因子HGFによる表皮細胞の増殖効果によるとされています。
また、間葉系幹細胞培養上清液の皮下投与でも線維芽細胞の瘢痕部への遊走やIL-10を抑制し、瘢痕形成を抑制する効果も報告されています。
青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範
参考文献:
1) Kuo YR, Wang CT, Cheng JT, et al. Adiposed-derived stem cells accelerate diabetic wound healing through the induction of autocrine and paracrine effects. Cell Transplant. 2016; 25: 71-81.
2) Lu D, Chen B, Liang Z, et al. Comparison of bone marrow mesenchymal stem cells with bone marrow derived mononuclear cells for treatment of diabetic critical limb ischemia and foot ulcer: a double-blind,randomized, controlled trial. Diabetes Res Clin Pract.20210; 92: 26-36.
3) Condé-Green A, Marano AA, Lee ES, et al. Fat grafting and adipose-derived regenerative cells in burn wound healing and scarring: a systematic review of the literature. Plast Recounstr Surg. 2016; 137: 302-312.
4)国際抗老化再生医療学会雑誌 第1号(1-20)2018 間葉系幹細胞による治療と抗老化 佐藤茂 劉效蘭
・院長プロフィール
総合内科、形成外科、美容皮膚科、美容外科。
がん診療に関しては10代の頃に母親を末期癌で亡くした経験と形成外科で癌術後の再建で患者様と日々関わることで、早期発見、予防医療の重要性を痛感し、がん検査や治療も行っている。
疾患の種類を問わず、アンチエイジングまで幅広い患者様に対応し、体の内側・外側ともに健康に綺麗にをモットーにしている。
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