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【医師解説】女性の方が男性より薄毛になりにくい理由

毛の仕事は体温を調節することや皮膚を保護することなど、生命を維持するうえで大切な役割を果たしています。
人間の毛は、手のひらや足の裏、ただし陰部の一部を除く全身の皮膚に広く分布しています。髪の毛は成人1人あたりで平均約10万から15万本ほど生えています。

毛の周期を維持するために、毛包と呼ばれる部分には毛包幹細胞が存在しています。これらの細胞が毛の成長をサポートしています。

毛は、毛周期という再生と退縮のプロセスを繰り返しています。成長期では毛が増殖し、退行期では細胞増殖が止まり、退縮が起こります。
ヒトの頭毛では成長期が約2~6年、退行期が約 2~3週、休止期が約3~4ヵ月であり、頭毛全体におけるそれぞれの期間の毛器官の割合は成長期が約85~95%、退行期が約1%、休止期が約10%の毛が占めます。

毛髪は正常の毛周期に応じた生理的な脱毛と発毛を繰り返して毛の密度を一定に保っています。おなじ硬毛でも睫毛の成長期は約30~45日と短く休止期は約100日です。また、軟毛の成長期毛の比率は約30~50%で、成長期は約50日です。毛周期は、部位や環境によっても異なります。

後天的な脱毛症では、毛周期に障害が生じて毛が薄くなったり欠けたりします。円形脱毛症は自己免疫異常によるもので、先行病変なく突然、 頭髪をはじめとした毛髪が存在する部位に境界明瞭な直径2~3cmの円形あるいは類円形の脱毛巣を生じます。
男性型脱毛症(AGA)は前頭部や頭頂部において、テストステロンがⅡI型5α-リダクターゼにより、ジヒドロテストステロン に変換され、前頭部や頭頂部毛包の男性ホルモン受容体に結合し、毛包サイクルに作用して成長期の短縮、硬毛の軟毛化が引き起こされます。女性でも同様の病態が起こることがあります。
女性では前頭部の髪際部を残して頭頂部の比較的広い範囲の頭髪がびまん性に薄くなる臨床像を呈することが多いです。
女性では、男性と同様に5α-リダクターゼや男性ホルモン受容体が後頭部よりも前頭部に多いことが確認されていますが、
男性よりも少なくさらにテストステロンからエストラジオールを作り出すシトクロムP450アロマターゼが男性よりも多いためテストステロンが減り5αリダクターゼを介したジヒドロテストステロンへの変換も減少するため男性よりも脱毛が起こりにくいと考えられています。

青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範

1) Cotsarelis G, Sun TT, Lavker RM: Label-retaining cells reside in the bulge area of pilosebaceous unit: implica- tions for follicular stem cells, hair cycle, and skin car- cinogenesis, Cell, 1990: 61: 1329-1337.

2) Ito M. Yang Z, Andl T, et al: Wnt-dependent de novo hair follicle regeneration in adult mouse skin after wounding, Nature, 2007:447:316-320.

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