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ヨウ素/I:大人にしてくれるミネラル
原子番号53の元素。
瓶に入れておくと紫色の気体がたちこめることから、ギリシャ語ですみれ色を意味するiodesに因んで名付けられた。
ヨウ素といえば、イソジン。
その殺菌力は、1969年にアポロ11号が月面着陸から戻った後に、道の地球外生命体を持ち込まないようにと機体を消毒するのに使われたほど。
外科手術や傷口、喉の消毒など、医療用の殺菌剤として広く使用されてきた。
最近では、その細胞障害性からあまり使用されなくなっている。
工業用としては、液晶ディスプレイの偏光フィルムにも使用されている。
ヨウ素の役割
人体におけるヨウ素の役割としては、
甲状腺ホルモンの原材料
とにかく、これに尽きる。
エネルギー代謝や成長、発達に不可欠なホルモンで、子供の発育にも必須。
また、排卵の調節も行うので、正常な月経や妊娠にも不可欠となる。
また、原発事故時に放射性ヨウ素が飛散し、被ばくのリスクがある際には、ヨウ素摂取により予防することができる。
ヨウ素の欠乏
世界の多くの土地では、ヨウ素不足が深刻で、ヨウ素欠乏はしばしば問題になる。
ところが、海藻をよく食べる日本では、ヨウ素はあまり欠乏することはなく、むしろ過剰の方が懸念されてきた。
最近では、海藻の摂取の不足や糖質の過剰摂取などによって日本でもヨウ素欠乏がみられるようになった。
ヨウ素が欠乏すると、甲状腺ホルモンの産生低下から、成長や発達、代謝に影響する。
体力の低下
基礎代謝の低下から太りやすい・冷えやすい
脱毛
成長障害
精神発達障害
抑うつ傾向
活気の低下
甲状腺腫など
世界のヨウ素欠乏地域では、赤ちゃんの精神発達遅滞に関わる主な原因がヨウ素欠乏である。
ヨウ素の弊害
感受性の高い人では、過剰なヨウ素が甲状腺ホルモン合成を阻害し甲状腺が肥大する可能性がある。
不思議なことに、ヨウ素欠乏症と同様の症状(甲状腺腫、甲状腺機能低下症など)が起きやすい。
特に、甲状腺機能低下症(橋本病など)がある患者では、ヨウ素の過剰摂取で機能低下が悪化しやすいので注意が必要。
甲状腺炎や甲状腺乳頭癌を引き起こす可能性もあるとされている。
ヨウ素を含む食材
ヨウ素は、海藻と海藻を食べる魚に豊富。
特に、昆布には豊富に含まれているので、昆布だしをとり、そのだし汁を飲む日本人の摂取量は十分である。
1日に摂る基準としては、昆布なら0.1g、ワカメなら3g、イワシ・カツオ・サバなら一切れ(80g)程度が推奨されている。