「信じ抜く」ことで見える風景
「信じる」と「信じ抜く」とでは、僕にとって少しニュアンスが違って聞こえます。後者の方が、とても難しいのです。
両者のニュアンスの違いは、その時間の長さを想像した場合に生じているような気がします。
つまり「信じる」とは「比較的短い時間」であり、「信じ抜く」とは「時間に限りがない」というふうに僕はとらえています。
例えば、「友達を信じる」と「友達を信じ抜く」とでは、やっぱりニュアンスが違ってくる感じがします。あなたは、どう感じますか?
今回は、「信じ抜く」をテーマに話します。
1.「信じ抜く」ことは難しい
よくある話ですが、学校でよく行われていたマラソン大会を思い出してみてください。
ある友達が「一緒に走ろうね!」とにこやかな笑顔で契約を交わしてきたとします。
友達の言うことを「信じて」、いざスタートの合図が鳴り響くと、契約を交わした本人が、自分を差し置いて走っていってしまい、ゴールしてしまうということが起きます。
そのとき、契約させられた子は、少なからず、その友達に「不信感」を抱きます。
ここで、今後の選択肢が二つになります。
一つは、これからはその友達を信じることを辞めるか。
そして、もう一つは、それでも信じ続けていくか。
もちろん、これは極端な例ですが、以上のような選択肢しかなかった場合、あなたなら、どちらを選びますか。
人は裏切られることを嫌います。傷つくことを嫌います。だったら、そうならないためには、これからは自分を守るために、「見切り」をつける方へ向かうのが自然です。
「信じる」ことはできる。でも、それをずっと続けていくことは、なかなか難しいですよね。
では、実際、その難事をしてる人はいるでしょうか。
います。
2.信じ抜く行為を行っている人とは
一番に思い浮かべるのは、「親」です。
子どもが、いくら間違った言動をとったとしても、多くの親は決して見捨てるようなことをしません。
たとえ、世間から後ろ指を指されることがあったとしても、きっと信じて待ち続ける親は多いことでしょう。
不登校やいじめの被害者になっている子どもたちをもつ親は、どこまでも子どもの味方であり続けます。
それが親としての覚悟だからです。
信じ抜く行為を無意識に行っている存在なのです。
例えば、僕の知り合いで、不登校の中学生をもつ親御さんがいます。
僕は、第三者的存在ですが、その親御さんからよく相談を受けます。その相談の中で、お子さんから、傷つくような言葉を何度も浴びせられていたようです。
一番苦しいのはそのお子さんに違いありませんが、親も一緒に苦しいはずです。崖っぷちに立たされているかのように感じています。
しかし、その親御さんからは、どこまでもその子の幸せを願っている様子を感じさせます。
「信じ抜く」ことは、自分も傷を負います。その傷を負ってまでも、あなたのことを想ってくれている存在は、きっといるはずです。
親以外でも、学校の先生、会社の同僚、近所のおじさん・おばさん、友人など、あなたの身近なところに実はそういう人がいるかもしれませんね。
3.バンド「dredkingz」でも感じた「信じ抜く」
僕は「dredkingz」というバンドのボーカルでした。「でした」と過去形になっているのは、メンバーの一人がこの世を去り、バンドの維持・継続ができなくなったからです。
ちなみに、現在は新しいバンドのボーカルとして活動を開始しています。
dredkingzというバンドの要であるドラマーの今川勉。
彼は、知る人ぞ知る「ECHOES」というバンドのプロドラマーでした。難病を患い、プロの第一線を退いて地元に帰郷。不思議な縁で、一緒にバンドをすることになりました。
年齢は大きく離れていましたが、難病の後遺症を抱えながらも、前向きに、精力的にバンド活動を行ってきました。かれこれ約15年。僕は彼とともに音楽をやってきました。
ある日、ライブに向けての練習中、今川さんがこう言ったのです。
「なんか、足が思うように動かないんだ。悪いけど、曲数減らしてくれる?」
今まで聞いたことのない言葉でした。確かに、バスドラのキックのリズムが大きく乱れ、曲が成り立っていませんでした。
不安を覚えましたが、ライブでお客さんに披露するというのであれば、致し方ありませんでした。
2019年3月。東京のライブハウスで、今川さんの還暦を祝うライブが行われました。たくさんの方々に祝福されましたし、TBSの取材陣も集うほどのビッグイベントになりました。
2019年8月。今川さんの足の状態は、ますます悪くなり、地元の音楽フェスを機に、dredkingzの活動を足の状態がよくなるまで休むことになりました。
僕もその時を境に、バンド活動を休むことにしました。
2020年1月中旬のことでした。メンバーから突然電話がかかってきました。
「今川さん、、亡くなったらしいよ。」と連絡を受けました。
亡くなる一週間ほど前に、僕は今川さんと音楽の話で談笑したばかりでした。喉の調子が悪いというだけで、特に変わった様子はありませんでした。
一ヶ月後には、葬儀が行われました。その後、今川さんと同じ【ECHOES】の元メンバーで親友の岡さんと、居酒屋で今川勉を偲びました。
「勉はさあ、今だから言うけど、君らのことを本当に気にかけていたよ。すごく、音楽に対しての姿勢がいいって。dredkingzにいてよかったよって。」
僕はあふれる涙を抑えることができませんでした。居酒屋で肩をふるわせて男泣きをしたのは、生まれて初めてのことでした。
難病で思い通りにいかない自分の体のことより、僕たちのことを心配し、応援し、信じてくれていたことを知りました。
「信じ抜いてくれた数少ない人」でした。そして、バンドにおいても仲間を信じ抜くことの大切さを教えてくれた人でした。
4.まとめ
相手がどんなに苦しい状況でも、相手の幸せを思い、信じ抜くことができれば、いつかその相手も、誰かを同じように信じ抜く人になる。
僕はそう思います。
切り捨てることは、とても簡単です。でも、どこまでも仲間を信じて信じて信じ抜く姿勢は、きっと自分にもよい影響となって返ってくるはずです。
まさに、今僕は新たなバンド「Ground Level」をスタートさせました。
仲間を信じ、今川勉が教えてくれたことを、多くの人に伝えていけるように今を生きています。
そして、僕たちの音楽が少しでも、悩み苦しんでいる人に元気や勇気をあたえられるのなら、これほど嬉しいことはありません。
下記のURLは、以前のバンド「dredkingz」 のMVのURLです。今川勉の遺作となったこの曲ですが、僕にとってとても大切な曲になりました。自信作です。是非、今川を始め、僕らの熱い思いを感じ取っていただけたらと思います。
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