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タチヨミ「コーヒーを飲みながら⑰

コーヒーを飲みながら」第1巻第2章《生き物たち》夏の光


西日は灼熱の鉄
開かれた溶鉱炉の中のように 煮えたぎって蠢いているのか
刻々と様子を変え 山の上に来る頃には
太陽は倦怠し
憂いた光は しっとりと風に混じる

山に隠れ始めると 夕の帳のせいか
ソーダの中のオレンジになる
草抜きを終えると
オクラと シソと バジルを収穫し
山に日が帰っていくように隠れるのを見届けて 私も家に帰る

バジルが新鮮なうちにジェノベーゼソースを作る
すり鉢で
ニンニクと カシューナッツと バジルと 塩と オリーブオイルを 
すり混ぜる

ある夏の日 
光りを溶かした透明な波が打ち寄せて
薄く広がる遠浅の海で
娘と 
息子と
遊んだ後
海辺の「パラディソ」楽園という名のレストランで食べた
ジェノベーゼソーススパゲティーを思い出しながら




「コーヒーを飲みながら」第1巻 第2章《生き物たち》夏の光より一部抜粋。本では行替えはしていません。ノート用に行替えしてアレンジしてみました。
2021年8月に自費出版いたしました。コチラから購入できるようになっています。よろしければ、ご覧ください。

                             星原理沙



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