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タチヨミ「コーヒーを飲みながら⑳

「コーヒーを飲みながら」第1巻 第4章《未来へ》手


 デザート工場での仕事は、手指を細やかに使う仕事が多い。一番繊細だったのが抹茶ムースで、ムースの上に最後の小豆を乗せるのが難しい。ラインに付き準備している段階で煮た小豆が大きなボールに用意され、それとともにお椀くらいの小さなステンレスのボールとピンセットがあった。小豆とピンセット。まさかの通りで、小豆を一粒ずつピンセットで摘まんで、直径6センチから7センチほどのムースの真ん中に載せるのだ。コンベアーは速く、もたもたしてはいられない。5個並び4列で流れてくるうち5個は入れないと仕事は終わらない。全神経を集中させて必死だった。ピンセットを押しすぎると小豆は沈んでしまうし、端に寄ってしまってもいけないので修正しようとすると汚くなって廃棄するしかなくなる。ピンセットに力が入りすぎると、小豆がつぶれてしまって小豆がピンセットにめり込む。小豆を外しているうちにどんどんムースが流れて行ってしまう。しばらくたって、ラインが中断したときに熟練した人が教えてくれた。小豆を縦に挟むと潰れないのだと。




「コーヒーを飲みながら」第1巻 第4章《未来へ》手 より一部抜粋。
2021年8月に自費出版いたしました。コチラから購入できるようになっています。よろしければ、ご覧ください。

                             星原理沙

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