心電図⑤たまに出現、AFL(心房粗動)
心房細動の次は粗動。
細動と粗動。一文字違いだけど、内容は全く異なります。
どんな不整脈?
簡単に言うと、右心房内の同じ部位をクルクルと回り続ける不整脈。
右心房以外を回ることもあるけど、複雑になるので割愛。
同じ部位を、といっても、どこでもいいわけではない。
本当は自由気ままに走り回りたいのですが、走れる部位が決まっているのです。
正確には、普通の電気と一緒で、刺激伝導系は絶縁体を超えることができない。つまり、絶縁体の手前を沿うように走り続けるワケです。
では、右心房で絶縁体にあたる部分はどこか?
右心房と右心耳を分ける分界稜がそれに該当します。
もうすこし細かく言うと、右心房は
・櫛状筋+心房中隔:原始心房由来
・櫛状筋を認めない部位:静脈洞由来
に分かれます。つまり、そもそも構成する組織が違うのですね。
この境目が分界稜です。電気信号がこの中で絶縁体部分をぐるぐる回り続けて越えられないのが、心房粗動です。
どうやって診断する?
心房細動と同様に、本来の心拍数はめちゃくちゃ早くなります。具体的には300/分程度。これが全て伝導すると、心室細動近い状態となって非常に危ない。
実際には、2回に1回、4回に1回程度で伝わることが多いです。
2:1心房粗動、4:1心房粗動と表現しますね。
でも、これだけでは心房細動との区別がつかない・・・
そんな時、思い出してください。
心房細動は主に肺静脈内の無数の発生源からめちゃくちゃに信号が出るのに対して、心房粗動は同じところをぐるぐる回るのでしたね。
つまり、心房粗動は基本的にR-R間隔が整になります。伝導比が変わると、R-R間隔が不整になりますけどね。
また、Ⅱ/Ⅲ/aVFで鋸歯状波というギザギザした基線の波がみられます。
これで診断することが多いです。
危険な不整脈?
心房細動と同じで、この不整脈そのものは生死に関わらないことが多いです。ただ、頻脈のため血圧が低下したり、頻脈誘発性心筋症等で心機能低下を引き起こすことも多々見られます。
さらに、主に左心耳に血栓を形成して塞栓症を起こすこともあるため、抗凝固療法は必須です。
遭遇したらどうする?
慌てないこと。
伝導比が1:1ならまずいけど、2:1以下ならひとまず落ち着こう。
心房粗動の特徴として、なかなか止まらない。マジで。止まらない。
ベラパミル入れようが、ジギタリス入れようが、アミオダロン入れようが止まらない。
なので、止めるのはあきらめましょう。でも、上記の薬剤は伝導比を落とすことはできます。大体4:1くらいが、症状の強さや血圧等を考慮すると落としどころかな。
8:1だと心拍数が40/分を切ることもあるので、心機能が低下していると血圧が落ちる危険性あり。
ただ、同じところをぐるぐる回り続けるということは。
そのルートの一点を断てばいいのでは?
その通り、カルディオバージョンやアブレーションが著効します。
後日記事にしますが、同じところを回る不整脈はリエントリー性頻拍といい、上記のカルディオバージョンやアブレーションの効果が高いことが多いです。
前回が重めだったので、心房粗動は少しあっさりと。
後日、もう少し丁寧に語ります。