糖尿病の「け」があるって、何?
健診で引っかかって内科の外来を受診した際に、
「あなた、糖尿病の「け」がありますね」
こう言われたことはありませんか?
・・・いや、このような表現をする先生がいるのでは?
と勝手に思っています。
というのも、どこからどうみても明らかに糖尿病で、かつ糖尿病の薬を何剤も内服しているのにも関わらず、
「糖尿病の「け」があると言われています」
と仰る方が多いんですよね。
特に外勤先(=専門医がいない病院)で。
・・・うーむ。
これを言われている方に、最初に伝えたいこと。
糖尿病の「け」など、ありません。
恐らく患者さんにも分かりやすく、という願いを込めて誰かが使いだした言葉なのでしょうが。。。
正直言って全く役に立たないどころか、有害な言葉だと思っています。
なぜか?
理由は大きく分けて3つあります。
第一に、
誰がどう見てもまごうことなき糖尿病の方が「け」があると言われたら、
「多分このままだと糖尿病になるけど、まだ大丈夫なのだろう」
という印象を抱くからです。
そのために生活習慣の指導が遅れたり、眼科の受診が遅れて失明したり、糖尿病性腎症になって透析になったり。
私は、このような方には「け」じゃなくて糖尿病です。
しっかり治療しないと、まともな老後は過ごせないと思ってください。
と、厳しめに指導します。
第二に、
境界域ではあるけど診断基準を満たしていない方、もしくは初期の糖尿病の方に、不要な内服薬を導入する医師がいるからです。
糖尿病=即インスリン、内服薬!ではありません。
年齢や生活スタイル、ADL等を考慮して目標を設定し、生活習慣の是正を図る必要があります。
この目標を設定、というのが非常に大事で、どの程度まで血糖をその手段で落とすのか?が明確になっていないといけません。
もちろん、初診時の時点で高血糖による緊急性の高い疾患を起こしかけている方は、この限りではありませんけどね。
第三に、
糖尿病の「け」などという医学用語はないからです。
糖尿病なのか、糖尿病予備軍(いわゆる境界型糖尿病)なのか、それにすら至っていないか。
これらをしっかり医師が診断して指導しないといけません。
つまり、糖尿病の「け」などどいう言葉を使用するのは、
現時点で何をどうすればいいのか分かっていない医師
これに尽きると思います。
結果として、第一・二に挙げたようなことに繋がる訳ですね。
また、糖尿病の治療をする際には、患者さんが現時点でどの程度治療に関心を持っているのか把握する必要もあります。
有名な行動変容ステージモデルですね。
適当に治療を行っても途中でやめてしまう方が後を絶たない理由の一因として、これらの状況が理解できていない、ところもあると思っています。
もちろん、患者さんによっては糖尿病の「け」という言葉に慣れ親しんでいる方もいると思います。
言い方が悪いですが、もう糖尿病による合併症による死亡、ないし日常生活の質を気にするような年齢や背景でない方であれば、それでもいいかもしれません。
でも、大抵の方はそうでないのではないでしょうか?
自力、もしくは他人の手を借りれば外来を受診できる方が多いですよね。
そのような方々が、医師の力量不足による認識の間違いのために、不要な合併症を起こすのは見るに堪えません。
そのため、私は何回でも言います。
糖尿病の「け」なんてありません!!!
ちなみに、
・喘息の「け」がある
・高血圧の「け」がある
これらの言葉もまったく意味不明です。
私のnoteを読まれた方々は、この認識を持って頂けると嬉しいです。
あまり医学的な内容ではありませんでしたが、普段の診療で気になることを挙げてみました。