球団ヒストリー48.企業の懐と主軸の確保
2012年に就職の斡旋を始めた鹿児島ドリームウェーブ。
その第一号は、2011年後半に入団し、その後斡旋によってユーミーコーポレーション株式会社(当時は弓場建設株式会社)に入社した北迫太樹さんだった。
「味を占めたんですよね」
もともと責任感が強く面倒見のいい北迫さんは、社内での働きも目を見張るものがあったという。捕手というポジションもあり、全体を見る視野の広さを持っていたのだろう。
選手としてプレーするということはつまり、試合の日は休むし、練習に参加するために仕事の調整が必要なわけだ。
企業としては、そういった制約があることを見越して”試験的に”という前提での受け入れ。
しかしその見事な働きっぷりに「味を占めたんですよね」と笑うのは、ユーミーコーポレーションの弓場昭大社長(当時は専務)だ。
もう一人!
そういうわけでもう一人、弓場建設株式会社(当時)の面接室に送り込まれたのが、長打力のあるスラッガー田上幸司さん。
田上さんは北迫さんと幼馴染。高校卒業後は北海道の社会人野球企業チームでプレーしていた。
実は2011年後半に、市の契約職員をしていた北迫さんを鹿児島ドリームウェーブに誘ったのは、まだ入団もしていなかった田上さん。
「幼いころ近所の公園で毎日やっていたように、また一緒に野球がやりたい」そんな想いがあったのだろう。
企業の懐
田上さん、とてもとても前向きで素直な性格。
初の就職面接のため國本代表にアドバイスを求めると「とにかく元気よく行け」と言われたそうで、面接室でも素直に元気よく挨拶したという。
これがまぁ、なかなかに度肝を抜かれる音量だったようで。
「グラウンドそのままの声だったと思います。キミのボリュームはどうなってるんだ、と」その場の面接官たちは面食らったそうだ。
しかし、そう話してくださる弓場社長(当時は専務)の表情はとても楽しそうだった。
それもまた企業の余裕なのか。
現在は独立起業された田上さんだが
「思い切り野球ができて、とにかくありがたかったです!社長も代表もすごく尊敬してます。そして独立したからなお感じるんですが、野球選手を受け入れるって、企業の懐がすごく大きくないと」
その言葉に、企業の理解を得て選手を受け入れていただくことのありがたさがうかがえる。
主軸の確保
企業の受け入れによって、守備の要であるキャッチャーと、クリーンアップを任せられるスラッガーが確実に試合に出場できるようになった。
これは、試合ですら選手が集まらず棄権の危機をも経験した鹿児島ドリームウェーブにとっては大きな安心になった。
そして2023年現在に至るまで、ユーミーコーポレーション(株)には常に複数の現役選手が在籍している。