鹿児島ドリームウェーブNews!2023.8.10号 第47回全日本クラブ野球選手権大会二次(九州地区)予選
全日本クラブ野球選手権大会二次予選とは
まず、全日本クラブ野球選手権大会とは何なのか。
4月の都市対抗野球大会予選は、企業チームもクラブチームも参加することができる。
企業チームというのは、母体となる企業がある。つまり企業の野球部であり、野球も仕事のうちであったりする。
一概には言えないかもしれないが、やはり練習環境に恵まれやすいし金銭面の負担も少なく、野球に集中しやすいというメリットがある。
それだけに企業チームには強豪が多い。
対してクラブチームは、企業を母体としていないチームが多い。何社ものスポンサー企業が後押しをしてくださることもあるが、あくまでもサポートであり、仕事をしっかりやったうえで、別の時間に練習する。
つまり、常に自分たちの生活を支えるために働きながら、並行して野球をやっている。
企業チームと比べると、野球だけに集中できる環境とは言い難い。
背景や環境が違うため、実力差が生じやすいのも事実。
そのため、クラブチームだけで腕を競おうというのがクラブ野球選手権だ。
全国へつながる『全日本クラブ野球選手権大会』と、地方大会として九州では『九州クラブ野球選手権大会』がある。
鹿児島ドリームウェーブが目指しているのは、この『全日本クラブ野球選手権大会』を制しクラブ日本一になることだ。
6月に開催された全日本クラブ選手権一次(南九州地区)予選で第二代表となり、今回の二次(九州地区)予選に駒を進めた鹿児島ドリームウェーブ。
二次予選では、福岡、中九州、南九州、沖縄の4地区から各2チームずつが集結。8チームがたった1枠の本戦出場を懸けて戦う。
初戦 vsビッグ開発ベースボールクラブ
初戦は、沖縄県のビッグ開発ベースボールクラブ。
昨年の覇者であり、優勝候補の筆頭だ。
この日のスタメンは以下の通り。
1、レフト 高尾月翔 [(株)ゼンケイ]
2、センター 山下馨矢 [ユーミーコーポレーション(株)]
3、サード 榎並虹太 [(株)昴]
4、キャッチャー 上村大希 [ユー三―コーポレーション(株)]
5、ファースト 川口侑宏 [(株)ゼンケイ]
6、ライト 吉田賢太 [城山ホテル鹿児島]
7、セカンド 下池敦士 [ユー三―コーポレーション(株)]
8、指名打者 島木滉大 [(株)西川グループ本社]
9、ショート 馬庭龍也 [(株)ゼンケイ]
ピッチャー 肝付大昌 [(有)桂信システム]
私が注目したのは5番と6番。
ふだんは5番 吉田賢太 選手[城山ホテル鹿児島]、6番 川口侑宏 選手[(株)ゼンケイ]ということがほとんどだが、ここが逆。
5番 川口、6番 吉田。
調子のいいパワーヒッター吉田選手を6番に下げたことにはどんな狙いがあったのだろう?
私は6番にいる川口選手の不気味さが好きだったんだが、しかしここは逆になってもまた6番吉田選手って不気味だ!
そして8番指名打者は 島木滉大 選手[(株)西川グループ本社]。
とにかくチームのために、陰に日向に多方面から動いてくれる選手だ。
勝負強さもあるし、なにせその声の大きさと笑顔は、チームの活力。
もう、このオーダーの時点で私は「おもしろい!」と声が出ていた。
結果は敗戦
ここで先に結果をお伝えしてしまうと、敗戦である。
ビッグ開発 | 0 0 3 | 2 0 0 | 1 2 1 | 9
鹿DW | 0 0 2 | 0 0 1 | 1 3 0 | 7
残念ながら、二回戦に進むことはできなかった。
ヒット数はビッグ開発の12本を上回る16本。
そのうち長打が5本。
これだけのヒットを放ちながらも、11残塁。
ここぞというところであと一本が出るか出ないか。
その勝負強さが勝敗を分けた。
「ヒリヒリする」試合
先に結果をお伝えしたのには理由がある。
私自身この記事を書きながら、どうも敗退したことが不思議な気さえしてしまった。
普通に書いていたら、まるで勝ち進んだかのような内容になってしまったので、先にお伝えしたというわけだ。
スタンドでは「いや~、プロ野球とかよりもヒリヒリする試合だわ」という声も聞かれたとか。
たしかに、3時間に迫る長い試合だったにもかかわらず、それを感じさせなかった。
常に次の塁を狙う積極性、四死球を与えても切り替えが早い投手陣、野手陣のバックアップ。
思い返すと熱くなる。
負けたとはいえ、非常にいい試合だったと思う。
個人的推し2人
この試合で特に私の胸に響いてきた選手は2人。
まずは川口選手。
久々に5番に返り咲き、二塁打2本と躍動した。
返り咲きとは言っても、昨季までは指名打者での5番。今季はファーストでフル出場だ。まったくもって意味が違う。
特に2回、ファウルで粘ったあとの7球目をセンターにはじき返した打球は昨季までの川口選手ならシングルヒットに留まっていたであろう当たり。
ギリギリセーフではあったが、川口選手が足を見せることはチームに活気をもたらすように思う。
そして榎並選手。
もうこの人に至っては、打つのが当たり前すぎて。
チャンスで榎並選手に回ってきたら、まず間違いなくなんとかしてくれる、そんな安心感がある。
でもでも。
打つのって当たり前ではないのだ!
そう思ったのは、スコアを振り返っているとき。
1試合に2安打なんてことも榎並選手にとっては通常運転のような気がするが、今回は5打数4安打、打点2。
打つのが当たり前すぎてスルーするところだったが、1試合に4安打なんて、めったに見られるものではない。
改めて、榎並選手の勝負強さと安定感に感服した。
投手陣総力戦
先発投手は肝付大昌 投手[(有)桂信システム]。
一次予選では、新型コロナ感染のため出場できなかったため、久しぶりの公式戦での登板だ。
今シーズンからの新ルール”ピッチクロック”(※)により思わぬ四球を与えたが、バックにも支えられなかなかの滑り出し。
肝付選手は4回を投げ、そのあとを江上翔紀 選手[(株)昴]~佐伯賢佑 投手[ユー三―コーポレーション(株)]~堀田京佑 選手[(株)ゼンケイ]~田中辰徳 選手[(株)リンクエージェント]とつないだ。
投手登録8人のうち5人のピッチャーを送り出す総力戦。
勝てばダブルヘッダーとなる試合。ここまでの選手を送り出すのは苦渋の選択だったんじゃないだろうか。
各投手とも苦しみながらの投球だったがよく踏ん張った。
四死球がもう少し少なくなれば、試合展開はがらりと変わるのではないか。
戸嶋采配
この試合、オーダーをいじってきた戸嶋監督。
6回には、5番 川口選手が二塁打で出塁、6番吉田選手がヒットで続き点に結びつけるなど、打順を入れ替えた戸嶋采配が的中した。
この打順にはもう一つ意味があったかなーと思う。
榎並選手、上村選手という不動の3、4番だが、実は今季、上村選手の調子が今ひとつ上がってこないように感じていた。
4番でスリーアウト目を喫し、次の回は5番吉田選手からという場面が多かった。
たぶん、吉田選手は走者がいるほうが力を発揮するタイプ。
そのためか、OP戦では3番 上村、4番 榎並、5番 吉田ということもあった。
でもやはり4番 上村としたのは、戸嶋監督の「お前が主砲だ。頼むぞ」という発破のような気がした。いやご本人にはお聞きしていないので勝手な憶測だが。
そして今回は、上村選手が5打数2安打2打点と、立派に4番の仕事を果たした!
戸嶋監督の「ナイスバッティングだ!」というイケボが聴こえるような気がした。
9年ぶりの鹿児島開催
この二次(九州地区)予選が鹿児島で開催されるのは9年ぶりとなる。
今年は6月の一次予選も鹿児島開催だったため、選手の所属企業の方々が足をお運びくださった。湯之元球場の小さなスタンドがとても華やかでにぎやかだった。
今回の二次予選、ドリームウェーブは鹿児島県を代表するスタジアムである平和リース球場での試合。今回も多くの方々にご来場いただき、その声援はどれほど選手たちの背中を押してくれたことだろう。
大会は全7試合が行われ、ビッグ開発ベースボールクラブが2年連続の本戦出場を決めた。
私は決勝も放送席で見ていたが、ビッグ開発の強さは圧倒的だった。
そんなチーム相手にいい試合をしたとはいえ負けは負け。
「勝負は結果がすべて」。
戸嶋監督がよく話される言葉だ。
次は九州クラブ選手権が待っている。
お盆を前に、すでにそれぞれ闘志を燃やしているようだ。