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球団ヒストリー82.クラブチーム運営勉強会

第一回クラブチーム運営勉強会

2014年11月29日、球団代表國本正樹さんは、和歌山県有田市にある箕島高校の前に立っていた。
その目的は、この日初開催となる『クラブチーム運営勉強会』への参加だ。

和歌山箕島球友会(現・マツゲン箕島硬式野球部)と言えば、当時も今も社会人野球クラブチームとしてはトップクラスの実力を誇る。
※執筆している2024年も、全日本クラブ選手権を制して日本選手権への出場を果たした。
この場所は、同チームの本拠地だ。

勉強会のテーマは「和歌山箕島球友会の取り組みに学ぶ」。

参加したのは、全国から集まった7チームの代表者。
・和歌山箕島球友会
・札幌ホーネッツ(北海道)
・水沢駒形野球俱楽部(岩手)
・いわき菊田クラブ(福島)
・コットンウェイ硬式野球倶楽部(栃木)
・松山フェニックス(愛媛)
・鹿児島ウェーブドリーム

また、ドリームウェーブと協定を結ぶ鹿児島県日置市からも、当時の市議会議員出水賢太郎さんが参加されている。
他チームは代表一人、またはチーム内で複数人の参加だったことを鑑みても、國本代表の視点の違いが感じられた。

画期的な取り組み

和歌山箕島球友会の取り組みは、非常に画期的なものだった。
行政と連携し施設管理制度を活用。つまり、野球場を含む運動公園などの管理者となっているそうだ。

さらにいち早く法人化に踏み切り、NPO法人となっていた。
法人化することによって、組織の安定化、資金調達の円滑化、活動の拡大などが期待できる。
NPO法人ということは、社会全体の利益のために活動するということ。地域貢献なども積極的に行っているということだろう。

また、母体が『松源(マツゲン)』という地元のスーパーマーケットである箕島球友会は、ふるさと納税による資金づくりも行っていた。税金の使用目的として『箕島球友会を支援する』ことを選択できるようになっていたそうだ。返礼品として、日本随一の収穫量を誇るみかんが送られたという。
さらに資金面では、監督、コーチ、マネージャーも部費を負担するという徹底ぶり。

有田市の望月市長や、箕島高校野球部の屋藤監督もこの勉強会に参加し、それぞれの立場から講話。箕島高校OBを中心に立ち上がったチームだという背景はあれど、行政や教育機関との良好な関係がうかがえる。

こういった球団運営のノウハウを、同チームの西川監督が惜しげもなく披露してくださった。

「非常~に参考になりました」

「箕島球友会の取り組みは、非常~に参考になりました」と國本代表は強調する。

「指定管理制度を活用することで、チームは収入と練習場所、雇用を同時に確保できる。うまいやり方だなと思いました。球場確保には大変な苦労をしていたので、とてもうらやましかったのを覚えています。
 このころはちょうど法人化も考えていたので、NPO法人だとどうなのかという具体例も知ることができた。
 一番衝撃を受けたのは、当時の球団運営予算でした。箕島はうちの3倍以上の予算があった。この大きな活動資金の差を目の当たりにし、ここを埋めていかなければならないと痛感しましたね」

箕島球友会はクラブチーム登録とはいえ、松源というスーパーマーケットが母体。様々な会社から選手が集まって構成されている鹿児島ドリームウェーブから見ると、それはほぼ企業チームといったイメージだ。

そういった背景の違いがあるとはいえ「参考にできることはとても多くあった」と國本代表は語る。

スポーツ科学博士、間野義之先生の講話

この勉強会を企画してくださったのは、先述したフリーライター根本賢一さん。

この勉強会ではさらに、根本さんが所属する『早稲田大学スポーツビジネス研究所』所長(当時)であった間野義之教授が講話くださった。

スポーツ科学博士である間野教授は、『公共スポーツ施設のマネジメント』や『オリンピック・レガシー:2020年東京をこう変える!』などのご著書を持つ、日本のスポーツファシリティの第一人者。
なかなか、これほどに密な状況でお話をお聞きすることは叶わない方だ。

間野教授によって語られた『スポーツビジネスの最新動向』に、國本代表も他の参加者たちも、大きな価値を感じていたようだ。

有意義な意見交換

全国からクラブチームの代表者が集まり、それぞれのノウハウや課題を共有すること。それは日本の野球界全体の発展にも貢献するのではないか。

鹿児島ホワイトウェーブとして立ち上がってから9年。
身近に前例がなく相談できる人もいない中、手探りで運営してきた國本代表にとって、他県のクラブチーム代表者と意見交換をする機会はとても有意義なものだった。

この勉強会の模様は、2015年の『Baseball Clinic』に、2か月にわたって詳しく掲載された。

2か月にわたって紹介されたクラブチーム運営勉強会の記事

勉強会ののち、指定管理制度の活用ができないものかと行政に働きかけたが、残念ながらこちらはうまくいかなかった。

とはいえこの勉強会は、この後のドリームウェーブの運営に大きな好ましい変化を及ぼしたことに間違いはない。
企画してくださった根本さんへの感謝は、今も変わらず國本代表の胸にある。

第5回以降球団としての参加はないが、現在も勉強会は続いている。
きっと当時の國本代表のように、他チームとの活発な意見交換に新たな打ち手を得るクラブチームも多いことだろう。

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