家
貸家にしていた元自宅の入居者が引っ越して行った。ここ数日、6年分の汚れや傷みを自分で補修している。
作業の合間に、昔そうしていたように畳に寝ころがってみた。ウトウトしてしまった。
団地から引っ越してきたとき、私は3歳の娘に「好きなだけ飛び跳ねていいよ」と言った。「本当にピョンピョンしていいの?」と母親を振り返って確認する娘。弾けるような笑顔だった。
家の中でかくれんぼもした。掘りごたつは絶好の隠れ場所になった。
枕もとにクリスマスプレゼントを見つけ、一刻を争うように包装を解いたのもこの場所だった。窓を全開にして空を見上げた子どもたちは、両手を口もとにあて「サンタさーん、ありがとうー!」と叫んだ。近所に響き渡る元気いっぱいの声だった。
夏にはウッドデッキでよくバーベキューをした。学校のこと、友だちのこと、サッカーやバレーボールのこと、、、陽も沈み、かすかに灯る炭あかりを前にして、子どもたちはとても素直に心の内を語ってくれた。
どこにでもある小さな家だけど、20年もの間、私の家族を優しく包んでくれた。
お金を出してプロに頼めば、すぐにきれいになるのだが、自分でのんびりやることにしている。
ヒグラシが鳴き始めた。そろそろ帰宅しよう。また明日。