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フィボナッチ数列の1の位の周期性(渋幕中2023)

 次の①〜③のルールにしたがって整数をつくって、左から右へ順番に並べていきます。

〈ルール〉
①1番目の数を0とする。
②2番目の数を a とする。(aは1けたの整数とする。)
③3番目からあとの数は、1つ前につくった数と2つ前につくった数をたした数の1の位の数とする。

 このルールで整数を並べたときのn番目の数を、(a, n)と表します。
たとえば、a=1とすると、数が0, 0, 1, 2, 3, 5, 8, 3, ……と並ぶので、(1, 8)=3となります。
次の各問いに答えなさい。

⑴(1, n)=0にあてはまるnのうち、2番目に小さい数を求めなさい。

⑵(1, 2023)+(a, 2023)=10にあてはまるaをすべて求めなさい。

渋谷教育学園幕張中(2023)

 これは中学受験生にとってはなじみのある数の並び(数列)ですが、今回はできるだけ予備知識なしで、ぜひとも「発見の喜び」を感じてほしいと思います。⑵は、入試本番の制限時間内で手際よく解くのはなかなかハードルが高いですが、時間を気にせずていねいに取り組めば、きっと解答の糸口をつかめるはずです。がんばってください。

(解)
⑴a=1のときの数の並びを順番に書き出すと、
   0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 3, 1, 4, 5, 9, 4, 3, 7, 0, 7, 7, ……
よって、求める数はn=16.

⑵ ⑴で書き出したことから、a=1のとき、(1, 16)からの数の並びは、a=7のときの数の並びと同じものである。つまり、
   (1, n+15)=(7, n)
そこで今度は、a=7のときの数の並びを、2回目に0が現れるまで書き出してみる。
   0, 7, 7, 4, 1, 5, 6, 1, 7, 8, 5, 3, 8, 1, 9, / 0, 9, 9, ……
つまり、
   (7, n+15)=(9, n)
つづいて、a=9のときの数の並びを、2回目に0が現れるまで書き出すと
   0, 9, 9, 8, 7, 5, 2, 7, 9, 6, 5, 1, 6, 7, 3, / 0, 3, 3, ……
つまり、
   (9, n+15)=(3, n)
つづいて、a=3のときの数の並びを、2回目に0が現れるまで書き出すと
   0, 3, 3, 6, 9, 5, 4, 9, 3, 2, 5, 7, 2, 9, 1, / 0, 1, 1, ……
つまり、
   (3, n+15)=(1, n)
よって、それぞれの数の並びの1つ目の群を
   ①:{0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 3, 1, 4, 5, 9, 4, 3, 7}
   ③:{0, 3, 3, 6, 9, 5, 4, 9, 3, 2, 5, 7, 2, 9, 1}
   ⑦:{0, 7, 7, 4, 1, 5, 6, 1, 7, 8, 5, 3, 8, 1, 9}
   ⑨:{0, 9, 9, 8, 7, 5, 2, 7, 9, 6, 5, 1, 6, 7, 3}
と表すとすれば、a=1, 3, 7, 9のときの各数の並びはいずれも
   ①→⑦→⑨→③
という、15×4=60の周期をくり返す。
よって、2023÷60=36•••43であり、また43=15×3-2であることから、
(1, 2023)は、a=1のときの数の並びの3つ目の群(⑨)の、後ろから3番目の数である。すなわち
   (1, 2023)=6

よって、この問題では(a, 2023)=4となるaの値を求めればよい。
そこでまず、a=2, 4, 5, 6, 8のときの各数の並びを書き出し、周期性を調べる。
まず、a=2のときは
   0, 2, 2, 4, 6, / 0, 6, 6, ……
つまり、
   (2, n+5)=(6, n)
次に、a=6のときは
   0, 6, 6, 2, 8, / 0, 8, 8, ……
つまり、
   (6, n+5)=(8, n)
次に、a=8のときは
   0, 8, 8, 6, 4, / 0, 4, 4, ……
つまり、
   (8, n+5)=(4, n)
次に、a=4のときは
   0, 4, 4, 8, 2, / 0, 2, 2, ……
つまり、
   (4, n+5)=(2, n)
よって、
   ②:{0, 2, 2, 4, 6}
   ④:{0, 4, 4, 8, 2}
   ⑥:{0, 6, 6, 2, 8}
   ⑧:{0, 8, 8, 6, 4}
と表すとすると、a=2, 4, 6, 8のときの各数の並びはいずれも
   ②→⑥→⑧→④
という、5×4=20の周期をくり返す。

一方、a=5のときは
   0, 5, 5, / 0, 5, 5, ……
つまり、
   (5, n+3)=(5, n)
となるから、
   ⑤:{0, 5, 5}
として、⑤を1つの周期としてくり返すだけである。

以上の結果を整理すると、a=1〜9までの各数の並びは、次の周期性をもつ。


【①→⑦→⑨→③族】
   a=1:①→⑦→⑨→③
   a=3:③→①→⑦→⑨
   a=7:⑦→⑨→③→①
   a=9:⑨→③→①→⑦
 ただし、
   ①:{0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 3, 1, 4, 5, 9, 4, 3, 7}
   ③:{0, 3, 3, 6, 9, 5, 4, 9, 3, 2, 5, 7, 2, 9, 1}
   ⑦:{0, 7, 7, 4, 1, 5, 6, 1, 7, 8, 5, 3, 8, 1, 9}
   ⑨:{0, 9, 9, 8, 7, 5, 2, 7, 9, 6, 5, 1, 6, 7, 3}
【②→⑥→⑧→④族】
   a=2:②→⑥→⑧→④
   a=4:④→②→⑥→⑧
   a=6:⑥→⑧→④→②
   a=8:⑧→④→②→⑥
 ただし、
   ②:{0, 2, 2, 4, 6}
   ④:{0, 4, 4, 8, 2}
   ⑥:{0, 6, 6, 2, 8}
   ⑧:{0, 8, 8, 6, 4}
【⑤族】
   a=5:⑤
 ただし、
   ⑤:{0, 5, 5}


これより、(a, 2023)=4となるaの値を求める

(ア)a=5のときは、数の並びに4が含まれないので適さない。

(イ)a=3, 7, 9ときの各数の並び(①→⑦→⑨→③族)のうち、3つ目の群の後ろから3番目の数が4であるのはa=9のものである。

(ウ)a=2, 4, 6, 8のときは、2023÷20=101•••3より、各数の並び(②→⑥→⑧→④族)のうち、1つ目の群の始めから3番目の数が4であるものが適している。したがってa=4である。

以上より、求めるaの値は4と9である。(終)

(⑵の別解)
 ((1, n)×aの1の位の数)=(a, n)であるから、(1, 2023)=6より、
   (2, 2023)=2
   (3, 2023)=8
   (4, 2023)=4
   (5, 2023)=0
   (6, 2023)=6
   (7, 2023)=2
   (8, 2023)=8
   (9, 2023)=4
よって、a=4, 9. (終)

ひとこと

 ⑵は書き出すのが大変な問題でしたが、とはいえ、周期性自体は意外に理解しやすいものだったと思います。

Ⅰ.aが5なら周期は3、
Ⅱ.aが5でない1けたの奇数なら周期は60、
Ⅲ.aが1けたの偶数なら周期は20、

という3パターンです。しかもこれらは、別解に示したように、すべてa=1のときを基準にして統一的に理解することができます。横に見ていたものを、今度は縦に見る、という発想の転換ができた人が、入試本番で本問を手際よく解き進められた人です。
しかし、今回は「発見の喜び」ということを一つのテーマとしていたので、多少垢抜けない方法をメインの解答として採用しています。答えにたどり着けなかった子でも、この解説をもとに、自分でもう一度数を書き出しながら考えてみてください。算数の勉強においてはしばしば、「有意義な遠回り」というものが大切になるのです。

 なお、a=1のときのこの数の並び(数列)は、
   1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, ……
という並びの1の位の数字を並べたものです。この数列に「フィボナッチ数列」という名前が与えられていることは、よく知られていると思います。今回の問題からわかったことは、フィボナッチ数列の1の位の数字を並べた数列の周期は60である、という事実です。
 規則性とは、自分で発見するからこそ意味があるし、楽しい、ということを実感してもらえていたら本望です。



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