新人ニューハーフの休日 とおくのまち14

 次の日は、日曜日で店は、お休みだった。
ママと、Uちゃんに、昼から会うことになっていた。
待合せのレトロな喫茶店へ急ぐ。
まだ慣れていない私は女装で行くのをためらい、男の格好のままで行った。
ママは、私の女装姿しか見たことないので、一瞬、誰かわからなかったみたい。

 Uちゃんは、ショーでたまにドレスを着る以外は、いつも男装だ。
男装というか、すごくきれいな中性的な美少年で、ふつうに男子の恰好をしているのにボーイッシュな女性にしか見えない。そのままでも、アイドルの女の子並みに可愛い。
私よりも歳は若いけれど、数ヶ月前に入ったから先輩なのである。
 
 喫茶店を出て、デパートへ行く。
ママはUちゃんのライターを買ってあげていた。
ライターは、ホステスにとっては重要な仕事道具なのかも。

    三人で京都の街を散策。商店街などを見て回る。
小物を売っている店で、クマのオルゴールがあった。
音楽に合わせて動く、そのイメージが、なんだか妻の姿にだぶった。
ふと、哀しくなった。もう、帰れないのかなぁ。
商店街を抜けて、ママの買物についデパートへ行く。

 時間があったので、パチンコへ行く。実は、ギャンブルの類はきらいだ。
そんなものを味あわなくとも、わたしの人生は、十分、ギャンブルだから。
ラッキーだった。三千円の投資が一万円くらいになり、家出して資金難の私には、とてもありがたかった。

    デパートの雑貨売り場でもショッピングした。
その時に買った小物が、その後ずっと愛用していたマリークヮントの
メタリックな薄紫の化粧ポーチだった。

 夜になると、ママの店のお得意様の料理屋へ連れて行ってもらった。
凝った料理ばかりが出てきた。高級店という感じで緊張した。
家出して以来、ちゃんとした食事をしていなかった私は、さらにおいしく感じた。
 明日の約束をして、私は、電車でホテルへと戻った。
 

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?