可愛い女の子になりたいの
「えぇ…ホラー映画?そんなものが好きなの…?僕は行かないから、1人で観てくれば?」
元彼を嫌いになったきっかけは、この一言が大きかった。何が「そんなもの」だよ!!!!!
しかも1人で行けとか、言い方が酷い。
1人で観てきても構わないのだけど、そんなこと言われて観る気も失せ、結局観ていない。
今こうして書いていて思い出したから、これからアマプラで観てこようかな。
ちなみに当時観ようとしていたのは『チャイルド・プレイ』という、サイコ殺人人形の海外ホラーだ。
「女の子なのに、モンハンやってるの?
じゃあ僕が守るから安心して!」
私「いやいや大丈夫だよ!!」
「え」
モンハンで守ろうとしてくれていた、中学時代のクラスメイトのRくん。
彼のキュンゼリフをかわしながら、ゴリラみたいな某モンスターの高速パンチ攻撃もかわす。
気づけば私は、そのゴリラモンスターの頭を何度も打撃し、倒していた。
Rくんは、回復薬をがぶ飲みしていて、モンスターと離れたところにいた。
それ以来「さぁ、ひと狩りいこうぜ!」と、
誘われることは無かった。
「泡沫はさ……穏やかで優しいよな。
ほわほわしてて癒されるよ」
女好きで有名だったTくん。
ある日、「そういや、いつも何聴いてんの?」と、私がつけてたイヤホンを素早くとり、自分の耳につけた。
私が「あ、ちょっと」と言った時点では、
もう手遅れだった。
【♪ 全てが〜〜ひれ伏すまで〜〜!
荊にまみれた〜この血が枯れ果てても〜〜】
L'Arc~en~Cielの『いばらの涙』が
割とデカめの音量で流れていた。
「………?」
あの女好きで寛容なTくんが、イヤホンをつけて顔を顰めた。
いや勝手にイヤホン取らないでくれよ。取るならちゃんと事前予約しといてよ(?)
まさかそんなことされると思っていなかったから、ガッツリロックを聴いていた。
そして、今後口説かれることは無かった。Tくんに関しては、ある意味これで良かったと思う。
それから数日後、「泡沫は見た目と違う」と
噂が広がっていた。
ラルク聴いてただけで、これはあんまりだよ…
私は、見た目が地味だ。
例えるなら、小さい雪だるまみたいな見た目だ。
服装や顔は特に目立たず、縦幅は無いくせに横幅は非常にある。
ブスと言われたことはないが、「地味」は散々言われた。
そんな私に近づいてくる男性は、ごく稀にいた。
しかし、そんな「地味で大人しそうな女」の中身がこれなのだから、みんな逃げていった。
怪物かよ私は。
だから私は、大学でとある男子に声をかけられた際、好かれる為に「全て隠す」ことにした。
実際、途中までは上手くいっていた。
最近食べたスイーツの話をして、ディズニーやサンリオの話をする。
でも、話す回数を重ねるうちに、
これ以上何を話せばいいのかわからなくなった。
好きな物の殆どを隠しているのだから。
ゲームも、音楽も、映画も。
それらが消え去ると、本当に会話のレパートリーが少ない。ほぼ相槌で終わってしまう。
そのうえ「なんの映画が好きなの?」などと聞かれてしまった際には、明らかに動揺してしまう。
「え、えっと、恋愛映画とか…?」
しどろもどろに、好きどころか苦手な分野の映画を答える。そんな私に彼も違和感を感じたことだろう。
愛されるために色々隠すと、
自分が無くなってしまうのだ。
隠したところで、結局その子とは
上手くいくどころか不仲で終わってしまった。
(彼との詳細は『クズ展へようこそ』1 にて。
読んで頂けたら嬉しいです)
自分の好きなものを好きになれ!!とまでは思わないけれど、せめて、引かずに受け入れてほしかった。
やっぱり、見た目とのギャップが酷すぎた。
愛されるために隠したけど、隠し通すのは難しいし、話せることがないからつまらない。
どうせ隠すのを失敗するのだから、今後はもう隠さずにいこうと思った。でも、引かれるのは怖いから隠したくなるのだ。
次こそは、大きすぎるギャップも受け止めてくれる寛容な方といつか出会えることを祈る。
その「いつか」は、いつ来るのやら。
来なくても別に構わない。
その時はイケメンとディズニーに行くのだから。
(レンタル彼氏)